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神奈川県立風が丘高校の体育館で、放送部長が殺害された。第22回鮎川哲也賞受賞作『体育館の殺人 青崎有吾』

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目次

まえがき

神奈川県立風が丘高校の体育館で、放送部長の朝島君が殺害された。その胸にはナイフが刺さり、ステージの床には、舞台袖から演台まで引きずられた血痕が残っていた。

登場人物

省略(P1からP5あたりに、ずらりと掲載されています。)
校舎全体と殺人現場となった旧体育館の見取り図も掲載されています。
これは助かりますが、想像の楽しみが少し減少したなあ。
いや、緻密なトリックを理解するためには必要かもしれない。
それに、「読者への挑戦」なる章まであるから。

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あらすじ(感想含む)

第一章は事件と共に始まる

体育館の殺人事件が起こったあと、その場付近にいた者たちは、先生から生徒まで別室に待機させられ、県警の仙堂警部と部下の袴田刑事によって、ひとりずつ事情聴取された。

そして、仙堂警部と袴田刑事が聞き取った内容が整理された。
彼らは体育館が密室だったことを確認し、殺された朝島くんと卓球部の佐川奈緒が五分だけ体育館で二人きりになる時間があったと結論づけた。

敏腕警部の推理は固まった。「犯人は佐川奈緒だ!」 バカなのか。

さて、その佐川奈緒の窮地に、とんでもない助っ人が登場したのである。
その助っ人は、なんと袴田刑事の妹だった。
正確には、その妹の袴田柚乃(はかまだゆの)ちゃんが偶然遭遇した、生徒会副会長の八橋千鶴(やはしちづる)が知る謎の男子生徒なのである!

第二章において探偵役が登場する

その助っ人は、第二学年の中間テストで全教科万点を採ったという「裏染天馬」(うらぞめてんま)君であり、学校の文化部部室に住み着いているといううわさである。

柚乃は、さっそく文化部の部室へ向かった。

さて、そこでの漫画的な展開から推理して、本格推理小説を読もうと焦ってAmazon Primeをタップした私の嗜好とは少し異なるものを引き当てたようである。
しかし、殺人事件には違いないし、30%も読んだところで読書を止めるわけにはいかない。
こうなったら、今夜一晩で読んでやる!

このあとは、一見オタクっぽい、やせて頭脳明晰な裏染君が、仙堂警部と推理の一騎打ちを行う。
「佐川奈緒さんが犯人」かどうか、お互いの推理の「矛盾」を指摘し合う。

自分が言ったことが、相手の推理に影響する。この身も細るやり取りを、敏腕刑事で大人の仙堂警部が、高校生相手に本気でやり合うのである。

ま、どちらがあり得ないかといえば、こんな落ち着いた高校生は、まずいないという点であろうかと思うが、結果は読者(いや柚乃さん)の期待どおり。

そして、生活費を稼ぐという私利私欲のために、この天才高校生は、探偵の続きを請け負って、事件解決のために、放送室を調査する。

本来はこのように素人が調査に関わることは皆無であろうと思われる。
問題を解決するのが敏腕警部ではなくて、天才高校生の方がフィクションとして、若い世代も飽きずに読んでくれるのかも知れない。

第三章は容疑者絞りに費やされる

翌日、全校集会が開かれ、校長先生から事件についての説明がされたあと、敏腕警部がマイクを握った。
「全員事情聴取するから、部活動組は各部室で待機!」

それと並行して、名探偵と刑事の妹たちは、アリバイ確認のため各部室を巡回する。
まるで刑事だ。し、高校生にこの違反行動は不可能だ!と思う。

演劇部、生徒会室、放送部と順番に巡回は進んで行く。
放送部への訪問時は、警部と鉢合わせるが、なんとか切り抜ける。
そして、犯人とトリックを確信したはずだった。

第四章の末尾で全てのヒントが出そろう

密室となった体育館のトリックは、箱が大きすぎて、裏染君が考えたトリックの証明が難しくなった。

行き詰まったかと思えたとき、新たな目撃者が現れる。それと同時に裏染君も傘のトリックに気づいたようだ。

警察は、その目撃情報だけで、その子が犯人だと決めたようだ。どうしたんだ敏腕警部さん。敏腕じゃなかったのか。(それは、最初の犯人決めつけで証明済。。。)

裏染君は先手を打った。彼の秘密基地?に、その子を招へいし、警察より先に事情聴取。

こう言う展開の推理ものは、どう分類したらいいのだろう。青春ミステリーものとか?
ライトノベルミステリーとか? 西村京太郎好き私の趣向とはかなり異なる。。。

気を取り直して、読書再開!

その子から得た証言により、裏染君は犯人を特定した(ようである)。

幕間 読者への挑戦

ここで、著者から読者への挑戦状が記載されている。
いままでの内容を読み返せば、犯人は論理的に導き出せると。
だが、推理小説ファンであっても、優秀な探偵ではないゆえ、この挑戦を無視することにした。
だいたい、こんな章があるほうが珍しいのである。そして、私は忙しい。

第五章は解決編である

ここでは、名探偵の裏染君が、一同を集めて謎解きを開始する。
警部と刑事さんも同席している。常識的に考えれば、あり得ない光景である。が、ここは謎解きを優先しよう。

犯人は、密室である体育館からどのようにして外へ出たのか?
それについては、裏染君の推理によって明らかにされた。

彼の推理の進め方は、まず、数々の状況証拠から、「犯人を絞り込む条件」を明確化したことだ。
そうしてから、明確化した四つの条件から、真犯人を絞り込んだのだ。

警察に、別の事件の支援を頼まれるなんて、やはり漫画的だ。

エピローグ 舞台裏

殺人事件の犯人は判明した。
だが、この事件には舞台裏があった。
隠された真実。
裏で糸を引いていた生徒。よく読めばわかる。冷静で、ニヤリとする生徒が。。。

解説/辻 真先

なんと、最近読んだ本の作者が解説されているではありませんか。
これは運命かも。

青崎有吾さんのプロフィール

1991年神奈川県生まれ。明治大学卒。2012年『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。第二長編の『水族館の殺人』は第14回本格ミステリ大賞候補作となる。(「BOOK著者紹介情報」より)

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