まえがき
アガサクリスティー賞受賞作家のこの小説の分類は、勿論ミステリー？
殺人犯を探すわけではなさそうだが。。。
サスペンス・SF・ミステリーというのは、いろいろくっつけすぎだろうか？
本の感触は柔らかく、文字および行間も程よく、老眼の私にも読み易そうだったのと、ややSFっぽいカバーの挿絵が気に入ったので読んでみることにした。
あらすじ のような（感想文）
プロローグ
機動救助隊のヘリコプターは、千葉県房総丘陵の上空にいた。
墜落した航空機は、台湾を離陸して成田空港へ向かう途中、房総半島で墜落した。
バラバラになった死体もあれば、生存者もいた。
生存していたのは、外国人らしき金髪の少女と、彼女を抱きしめる幼年だった。
（このシーンが何なのか。通常は物語の最後の方で回収されるが。）
第一章
伊吹薪彦 東京都・中央区
銀行の立てこもり事件、銀行員が通報したため犯人は立てこもった。
もし、銀行員が通報しなければ、犯人が立てこもらないのであれば、人名優先を考えたときに、通報は犯人が店の外へ出たときでは駄目なのだろうか。（素人の意見です。）
犯人はこちらの提案に一切耳を貸さないため、警察は強行を決定した。
・SAT制圧班班長 伊吹薪彦
・SAT制圧班副班長 東条
・SAT制圧班 藤崎塔子
SATとは 警備部特殊部隊 流血
SITとは 捜査一課特殊班 無血
今回は、SATが制圧したのだが、班長の伊吹は単独行動を取って、（そのおかげで人質は無事だったとはいえ） 上司から叱責を受けた。
世間では、別の事件がテレビで放映されていた。
ギフト ここでは、遺伝子操作で生まれた子供（デザイナーベイビー）のことをいい、ロシア・インド・イギリスの政府機関からデータを盗んだらしいが、その続報で盛り上がっていた。
この、ギフテッド・デザイナーベイビーを生んだ、中国共産党の幹部が入れ替わって、方針が変更になり、彼らも不要な存在として粛清されることになったため、ついに反旗を翻したのだ。
ユーリ・メレフ 千葉県・成田市
反旗を翻したデザイナーベイビーのメンバー：
・ユーリ・メレフ 長兄 宇宙開発の仕事に携わりたい 余命１年
・クマリ・クラナ 長女 医療分野の仕事に携わりたい 余命10年
・ダルトン・フイッシャー 次男 歌手関係の仕事に携わりたい 余命10年
潜伏先は千葉県。
伊吹八雲 東京都・中野区
空手の有段者である八雲は、同級生の石井君をいじめから救って、片親同士のそいつと仲良く？なった。
伊吹薪彦 東京都・中野区
息子の八雲といっしょに、離婚した妻と娘に会う日だ。ところが、八雲は家を抜け出してしまった。
そして、伊吹警部は堂島課長に呼び出された。娘に会うのは叶わない。
警備第一課長室には、藤崎塔子がいた。
二人はギフト三人のプロフィールを渡され、車で六本木のマンションへ連行された。
呼び出したのは、警察庁参事官の眉村次郎である。
眉村次郎 警察庁警備局警備企画課（極秘組織） 参事官 階級は警視正（以上）
ここで、プラチナブロンドの美人 ミランダ・バートランド女史が紹介された。
彼女はデザイナーベイビーだが、ギフトの仲間ではなく、CIA所属。
もともと中国の手下ということになるが、信じられないことに、この容姿を嫌悪しているという。
いわゆる、醜形恐怖症。信じられないと、藤崎塔子は思った。
今回、ギフトからの誘いを受けたが断ったという経緯で、「ギフトの極秘確保」がミランダのアメリカ代表としてのミッションであるが、彼女を護衛するのがSATの伊吹と藤崎の任務である。
申伯賛（シエン・ポーザン） 中華人民共和国・北京市
中国は、中国で、ギフトは中国がデザイナーベイビーを生み出したことやそのほかの極秘情報を他国に知られないうちに、デザイナーベイビーを始末することにした。
その任務を負ったのが、教官だった申伯賛（シエン・ポーザン）大尉と教官補佐だったの魏と楊である。
第二章
伊吹薪彦 東京都・江東区
バートランド女史は、ギフトのスパイではないかという疑いを持つ伊吹警部だったが、彼女は第一章で書いた立てこもり事件のビデオから真相を見抜いた。やはりデザイナーベイビーのIQは高く、日本警察は助けられたのである。
伊吹八雲 東京都・中野区
伊吹警部の息子の八雲は、自分と同じく父子家庭の石井に親近感を持った。
八雲は父が殺し屋だと思っているが、妹は警察官だと信じているようだ。
佐藤阿世 東京都・千代田区
観光庁国際観光課職員の佐藤阿世が、ギフトの標的となった。
かつてパスポートを盗まれた政府関係者という条件でターゲットにされたらしい。
その佐藤に、ギフトから連絡が入り、指示された場所へ向かわされた。
東条正春 東京都・墨田区
佐藤の電話からギフトの潜伏先を特定した警察庁警備局警備企画課の制圧班 東条の部隊は、墨田区のマンションの２９階にある2901号室に突入した。
だが、そこはもぬけの殻。二つの携帯が上下逆向きに合わされて置かれていた。
制圧に失敗した東条班が、帰りの車内で、ガスマスクの装備をはずさない男に気がついた。
そして、フル装備をはずした隊員たちは、その男が持っていた噴霧器のガスを浴びせられほぼ全滅した。
伊吹薪彦 東京都・墨田輝
伊吹、藤崎、バートランド女史。
バートランド女史は、すぐに佐藤に電話するようにアドバイスする。
佐藤の携帯に出たのは、ギフトのユーリだった。
「ギフトの目的は政府と話をすることではなく、政府関係者の誘拐」ですね、と女史。
ユーリは佐藤を尾行する警察官に変装して、途中で佐藤をだまして車に乗せそのまま誘拐したのである。
ユーリは、公安がマンションに突入したことで、日本警察すら信用できないと怒った。そして今回は警告だとも言った。
その会話の途中で、伊吹の携帯に着電、東条が率いた制圧班が、神経ガスで壊滅したとのこと。
これを聞いた伊吹は、電話中のユーリに「お前らがやったのか！」と聞くと、「何て・・・ことだ」といって通話は切れた。
ユーリ・メレフ 東京都・豊島区
伊吹の話を聞いたユーリは混乱した。裏切り？いつから？誰が？目的は？
ギフトと日本政府の双方を混乱させたいのか？わからない。
「これで日本政府との取引は・・・不可能になった」
それどころか、完全に日本にも敵対するテロリスト扱いとなった。
クマリとダルトンが裏切り者か、あるいはスパイと入れ替わっていた可能性がある。
ユーリが、アリバイの無いダルトンを疑い始めたとき、電話が鳴る。
「SATを壊滅させた者の名前を知りたいか？ならば、八日後の午後四時にディズニーパークのホテル・オブ・ホラーに来い。」
第三章
伊吹八雲 東京都・中野区
八雲は、付きまとうようになった石井君がうっとうしくて離れることにしたのだが、石井君は納得できない。
申伯賛（シエン・ポーザン） 中華人民共和国・湖北省・武漢市
申伯賛は、ギフトが日本のSATを神経ガスで壊滅してしまったとして、中国上層部から行動の遅さを叱責されていた。
申伯賛はギフトの仕業とは思えないと反論したが無駄なことだった。
かつては、武漢にデザイナーベイビー研究所はあった。
申伯賛は、元研究者の葉海黙に、デザイナーベイビーが入れ替わったりしている可能性を聞きただしたが、それはないという。
とりあえず、申伯賛は彼を尾行することにした。すると葉海黙は四日後に別の帰宅ルートを使った。
尾行を続けていると、黒フードの男に襲撃され、「日本へは行くな」と指示されたうえに警告として両手のひらを撃ち抜かれた。やはり、葉海黙は黒だった。
元研究者の葉海黙は中国共産党から消えた。
伊吹薪彦 東京都・墨田区
SAT制圧班が襲撃された現場。
公安ゼロ・特殊作業班の最優先任務は、ギフトの確保だが、CIAのバートランド女史は、SAT制圧班を壊滅させた犯人の特定に集中していた。
そして、謎が四つに絞り込めていると語る。
・犯人はトレーラーへの侵入前にどこにいたのか？
・現場のトレーラー内に残された神経ガスの噴霧器はどこから持ち込まれたのか？
・犯人はフル装備のままどうやって消えたのか？
・犯人の靴跡は見つからないのか？森の中にあるはずだが。
警察病院で唯一生き残った隊員から、犯人の身長は低かったとの情報を得た。
ギフトが犯人なら該当するのは、女性のクマリ。
そのとき、バートランド女史の携帯にギフトのクマリから入電！逆探知を指示！
彼女がもたらした情報は、ギフトの共用スマホの着信メールに葉海黙からSAT制圧時の警察官配備図が添付されていたという。ギフトの誰かが裏切り者という証拠か。
だが、クマリが日本政府の味方かどうかは判断できないので、ギフトの本拠地にカメラを仕掛けるよう指示し、彼女がそれに従うのかを観察することにした。
敵を寝返らせて味方に付けるこの方法は「運営」と呼ばれる。
逆探知の結果は、千葉県・浦安市内だった。
ユーリ・メレフ 千葉県・浦安市
東京ディズニーリゾート
ユーリは、SAT制圧班を壊滅させて犯人を教えてやると電話を受けて、ここに到達した。
そこに居たのは、黒フードの男だった。
ユーリは銃で撃たれ、手のひらはナイフが貫通して磔（はりつけ）の状態となった。
男は申伯賛のときのように「警告だ」と言った。
クマリが援護に飛び込んだが、遅かった。
黒フードの男は、ユーリを撃っておいて、自分がギフトのリーダーになると言った。
そして、ギフトのひとり、ダルトンは昔からの知り合いだと言った。
まずは、観光庁の人質だけでは不足なので、子どもを人質にして、攻撃されないようにする。
伊吹八雲 東京都・中野区
石井君は八雲との関係復活のため、妹の九葉の気を引くために、雇った男たちに襲わせて助けるというバカ丸出しの古典的手法を実行に移したが、雇った半グレ集団が九葉を気に入って連れ去ってしまった。
半グレ集団に一人乗り込むも、やられてしまう八雲。間一髪であやしい中国人が半グレたちを追い払った。
病院へ行くと乗せられた車の中で、八雲は自分が拉致されたことに気がついた。
伊吹薪彦 千葉県・浦安市
警察幹部の子息を人質にとった、黒フードの男たち十数名は、ディズニーリゾートのホテル・オブ・テラーの最上階に立てこもった。
空撮も禁じられたので、警察は距離のある周辺から様子を窺うだけだ。
警察は、ディズニー・アニバーサル・ホテルを丸ごと借りて、警察官僚会議を開催した。
会議の進行役は、眉村参事官。
警察幹部が発した「ホテル・オブ・テラーを占拠した目的は？」の問いに、誰も手を挙げないでいると、バートランド女史が手を挙げてしまった。このような場所では下っ端に発言権はないが。
バートランド女史は、ギフトがある組織に乗っ取られ、SAT制圧班を壊滅させたのもその組織であると主張したが、それでギフトが許されるものでもないと言い返された上に、日本に来た目的を話すように命令されてしまった。
第四章
ここからは、真相が明らかになっていくため、「あらすじのようなもの」は書かないでおきます。
それぞれの人間模様が交錯します。
強すぎるデザイナーベイビーに勝つ方法はあるのか、人質は助かるのか、制圧班の伊吹が抱えたトラウマとは、バートランド女史の四つの疑問は、バートランド女史が探していた人は見つかるのか、彼女の醜形恐怖症は治るのか、誰が生き残ったのか、ギフトの目的は何か、そして黒フード集団の正体と今回の事件を起こした目的とは！
この章は全ての謎が解明され、事件は終結します。
息もつかせぬ戦闘シーン、ぜひ、一読ください。
穂波了さんのプロフィール
1980年、千葉県生まれ。2019年、「月よりの代弁者」で第9回アガサ・クリスティー賞を受賞。
同作を改題した『月の落とし子』(早川書房)でデビューした。近著に『売国のテロル』(早川書房)がある。（WEB上の紹介文より）
〆
