はじめに
クリスマスの英国カンブリア州で切断された人間の指が次々と発見された。プレゼントのマグカップのなか、ミサが行われた教会、そして精肉店の店内で。現場には“#BSC6”という謎めいた文字列が。三人の犠牲者の身元を明らかにしようと刑事ポーたちは捜査に乗り出す。だが彼らはまだ知らない。この連続殺人の背後に想像を超える巨悪“キュレーター”が潜んでいることを・・・・・・驚愕必至のシリーズ第三作。(著書の裏表紙から)
ブラック・スワン現象とは、過去に前例がなく、予測不可能であり、多大な影響をおよぼす動きをいう。ことが起こったあと、発生は予期できたと後知恵で説明される—ナシーム・ニコラス・タレブ
主な登場人物
ワシントン・ポー 部長刑事(国家犯罪対策庁・重大犯罪分析課)
ステファニー・フリン 同課警部
ティリー・ブラッドショー 同課分析官
エドワード・ヴァン・ジル 情報部長(国家犯罪対策庁)
シャーリー・ベック カンブリア州警察本部長
ジョー・ナイチンゲール 同警視
エステル・ドイル 病理学者
ゾーイ ステファニーのパートナー
ジェシカ・フリン ステファニーの姉
主人公のポー部長刑事のほかは、みんな女性のような気がする。どうなってんの。
あらすじ
第一の殺人
男は赦しを請う女の指を、肋骨ばさみでうれしそうに切った。
それから気絶した女の首に針金を巻き付けて絞首具をきつく締めあげ、気管・経静脈・頸動脈をつぶした。
一時間後、男は女の指をもう一本切断した。
指の発見
クリスマスイブ
シークレットサンタでのプレゼントの中から“切断された指”が出てきて、プレゼントは失敗した。
ボクシングデー(クリスマスの翌日のこと)にベビーシャワー(何?)
部長刑事のポーは、同僚のブラッドショーにベビーシャワーに連れて来られた。
ポーの上司のフリンは妊娠しているのだ。こんな慣行があるとは知らなかった。
犯行現場その2
教会の洗礼盤に切断された指が二本置かれていた。女性のもの。
そして、A4サイズの紙がはさんであり、 “#BSC6” の文字。
犯行現場その3
ホワイトヘブンにある精肉店。肉がフックから吊るされている。
調理肉カウンターのケースの中に指はあった。男性のもの。
値札のところにA4の紙と“#BSC6”の文字。
一本の指は、死体から切り取ったものだと分かるらしい。
すなわち、殺人事件である。三人とも。だから連続殺人となる。
被害者のひとりの身元が判明
被害者のひとりについてDNA鑑定から身元判明。前科があったから判明した。
ハワード・ティーズデール、ホワイトヘブンの高台にあるタウンハウスの最上階に住んでいた。金持ちだ、きっと。
もうひとりの身元が判明
もうひとりの身元が判明した。だが、本人は見つかっていない。
アンドルー・プリッドモアという男性が、分かれた妻と連絡が取れないという。
別れた妻のレベッカ・プリッドモアは、ダルストンという裕福な村に住んでいた。
牽牛な館で、簡単には押し入られる心配はない、が。。。
誰もいない家の中を、ポーが観察して断定した。レベッカ・プリッドモアは誘拐された。
しかし、どうやってこの牽牛な住居に侵入したのか。
元夫の話では、元妻は鳥の世話なども好きでやっていたらしい。
三人目の身元も判明
二人目の捜査中に、フリンからの電話にポーが出ると、三人目の身元も分かったという。
名前は、アマンダ・シンプソン。女性。まだ25歳の若さである。
教会で発見された指は、おそらく彼女のものだ。
パソコンに残された写真に、特徴的なその指が写っていたのだ。
ポーは、親のせいで自宅を追い出されそうな状況で、捜査に臨んでいるらしい。
いろいろと忙しいことは、人生に付きものである。
ティリー・ブラッドショー分析官は、アマンダ・シンプソンが持っていた国防省のノートパソコンの暗号を数分で突破してみせた。
さて、犯人に行動を悟られるような通信はしていないか?
どうやら、ポー部長刑事とティリー分析官と上司のステファニーは、トリオで事件解決をしているようだ。
ポーは、ティリーがノートパソコンのデータを分析する邪魔にならぬよう、国防省の男を連れて、屋敷の庭が見える場所を探した。
そして、雑木林のある木にその痕跡を発見した。
ポーの出生の秘密
突然、ポー部長刑事の出征の秘密が語られる。
ポーは母がレイプされて生まれた子で、必然的に父は、生物学上の父ではない。という話。
さて、庭を監視する木が見つかった。その木に引っかかっている凧は、おそらく犯人が木登りをとがめられたときの言い訳のために設置して回収し忘れたものだと、ポーは予想した。
その凧は、極めて高額なもので、犯人はその凧を回収しに来るはずであるとポーは考えた。
監視カメラを設置し見張ることにした。
この凧に記されているロゴマークの解析をブラッドショー分析官の部下が進めた。
P210 「オーウェンはいいやつだが、あいつはメール交換するたび、自分の言葉で終わらせたいタイプなんだ。」とポーが言うシーンがある。
たしかに、そういうヤツは居るな、と思った。
だが、凧マニアの調査も難航する。
凧を注文して、どの家に届けられたかを追跡することは容易ではない。
「営業所受け取り」で手に入れたようだと分かったが、そうなると何人もの家を訪ねまわるか、営業所がちゃんとした身分証明書で確認していたかをヒアリングするなど、やることが多くなる。
袋小路の端まで行くとロータリーを利用してUターンした。とある。(P231)
英国ではこれが当たり前なのか? 日本なら袋小路の端は、ただの突き当りであろう。
凧の持ち主
ロバート・コウェルとその妹が逮捕された。
取り調べで、#BSC6と書かれた紙の写真を見たロバート・コウェルは驚愕の表情を見せたのだ。
これで犯人確定だ。
#BSC6:ブラック・スワン・チャレンジの
課題No.6ということ。
P323まで読んだが、まだ半分ぐらい。普通のミステリーならもう終了するころだ。
今回の事件を 「オンラインのチャレンジ型殺人ゲーム」 と定義している。
誰かが課題を出して、誰かがそれをクリアするが、次第に課題が犯罪に近づいてゆく。ゲームに夢中な者は、自分が遠隔操作で操られて罪を犯していることにも気づかないのだ。
チャレンジ型殺人ゲームの6番目の指示が殺人だとしても、なぜ三人も殺したのか、なぜ麻酔をかけた者とそうでない者がいるのか、わからない。
「目が覚めたとき、ポーは8時間歳を取っていた。」という表現が面白い。
我々は誕生日に突然歳を取るのではなく、刻々と歳を取っているのだ。
会社で「時間休」という制度が出来た時と同じ感覚だ。
当時は、1日単位で休むのが当たり前だと思っていたので、「時間で休む?」と思ってピンと来なかった。今では当たり前のように使っている。
章の終わりで話が展開する。話の結論を述べてから次の章で具体的な内容が展開される。
これの繰り返しのような文章構成になっているのかな、と300頁以上読んでから思った。最終ページは600頁を越えている。読めるかな・・・。
FBIからの電話
FBIからの電話ポーの捜査方針を変えることになった。
実は、アメリカでも類似の事件が起こっていたという。
連絡してきたFBI特別捜査官のメロディー・リーは、犯人を追い詰めたが、今は左遷されているという。大きな力で正義がねじ伏せられたのである。
キュレーターとは(Click!)
影響力を広範囲に及ぼす(人)、学芸員, 館長、精選された(人)
ティリー・ブラッドショー分析官は、ロバート・コウェルの「パソコンの壁紙の1ピクセル」にフォルダが隠されているのを発見した。そのフォルダには妹を盗撮した動画などが納められていた。
ロバート・コウェルがその動画を撮影した時間から、皮肉にも彼のアリバイが成立した。
すなわち、いまや変人扱いされているFBIのメロディー特別捜査官の主張に、にわかに信ぴょう性が出てきたのである。黒幕は別に存在する。
そして、何の関係性も無かった三人の被害者にも共通点が見つかった。
三人とも、エドワード・アトキンソン(覆面の男)の裁判で陪審員を務めていたことが分かったのだ。
エドワード・アトキンソンは、汚染物質を不法投棄し、周辺住民が甚大な被害を受けた罪を着せられたが、結果としてエドワード・アトキンソンは無実で、裁判のとき世間の称賛を浴びたいアホがエドワード・アトキンソンに高濃度の酸を掛けて、彼の顔をケロイド状にしたため、覆面をせざるを得なくなったという。実に悲劇だ。
エドワード・アトキンソンは、どこだ!?
彼は、かつて証人保護プログラムによって、べつの場所に移住し、そこであらたな身分を与えられ、あらたな人生を送っているはずである。
証人保護プログラムは、閉鎖系コンピュータシステムで処理され、エドワード・アトキンソンの今の名前など分かりはしない。
しかし、三人の陪審員とも、エドワード・アトキンソンは無罪だと主張していたという。
これでは、エドワード・アトキンソンがこの三人の陪審員に復讐する理由がないはずだが。。。
汚染物質を不法投棄した真犯人だった汚染物処理会社が倒産しているが、その一族や職を失った従業員などの復讐(自分たちが悪いのに・・・)と考えるべきか、あるいは、あらたな事実(自分が勤める会社が真犯人だった)にも耳を傾けられなくなった「信念固執」者の犯罪かも知れないとブラッドショーは主張した。
つまり、エドワード・アトキンソンは、犯人ではなく、むしろ汚染物処理会社の関係者から逆恨みされて命を狙われているターゲットだとさえ思われた。
指揮官のナイチンゲール警視は、エドワード・アトキンソンの保護のため、ポー部長刑事と共に、要塞となっていて人を寄せ付けない島に向ったが、州警察に恨みがあるエドワード・アトキンソンは、ナイチンゲールの話は聞かなかった。
キュレーター登場
だが、国家犯罪対策庁のポー部長刑事には、島に留まって警護することを認めた。
しばらくして、ポー部長刑事がいる島に、ブラッドショー分析官が合流した。
彼女は、エドワード・アトキンソンと話が合うようだ。
そして、妊娠しているフリン警部が交代のためにやってきて、ポー部長刑事とブラッドショー分析官と警護を交代した。
フリン警部が見張りを行っていたとき、突然キュレーターが現れて、妊娠しているフリン警部を襲った 。。。
ポーとブラッドショーが駆け付けたときには、妊娠していたフリン警部は、無残な姿となっていた。その描写は想像を絶するホラーなので、ここでは書けない。
『怒りのポー部長刑事!』と『悲しみのブラッドショー分析官』が誕生した。
フリンのパートナーであるゾーイがポー部長刑事に言う。
「事件の主犯格を見つけたら、殺してちょうだい、絶対に殺して」
警察官に言うべき言葉ではないだけに、その怒りは尋常ではない!
黒幕の正体
ところが、エドワード・アトキンソンは、すでに殺害され、キュレーターが成り代わっていた。
しかも、そのキュレーターも依頼人から雇われている殺し屋に過ぎなかった。
依頼人の名前は、8844。それを聞いたポーは黒幕の正体に気がついた。
そして、ポー部長刑事は、黒幕(すなわち、今回のフリン襲撃事件の依頼人)の部屋で待ち伏せた。
黒幕は、酔って帰宅した。
その正体に読者は驚く。
依頼人は何故、フリン警部のお腹から赤ちゃんを取り出して殺そうとしたのか。
ポー部長刑事の追求に、犯人は自白した。
人の妬みの怖さを知る。やはり原因はいつも人間関係である。
犯人の自白の中で、私の以下の疑問が解明されていった。
・フリンのパートナーは女性なのに、どうしてフリンは妊娠しているのか。
その理由がここではっきりした。
驚きの最後
謎解きは終わった。だが証拠はない。
自白を録音しておけば良かったのに、と思うが?
ところが、ポーはゾーイの願いを叶えてしまった。
「事件の主犯格を見つけたら、殺してちょうだい、絶対に殺して」(ゾーイ)
どうやって・・・。(読んで確かめましょう)
M・W・クレイヴンさんのプロフィール
イギリス・カンブリア州出身の作家。軍隊、保護観察官の職を経て2015年に作家デビュー。2018年に発表した『ストーンサークルの殺人』で、英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールドダガーを受賞した。(WEB上の紹介文より)
〆