著者 フィリップ・マクドナルド Murder Gone Mad (1931) 書評・感想
レビュー
展開の面白さ、見どころ
直訳の感じが多い海外作品ですが、これは割と読み易かった気がします。
主な登場人物は、目次のつぎのページに26名記載されているのは、助かります。ただでさえ把握しにくい外国人の名前ですので。よく似ているし。
途中で、捜査に関する一覧表が二回掲載されていますが、これは珍しいかもしれません。
犯行の理解に役立つうえに、パイク警視の真面目さと有能さが分かります。
途中からは、犯行声明文が何通も掲載され、どんどん面白くなっていきます。街の人たちも最初はおとなしいですが、あまりにも殺人が起こるため、集会が行われたり、警察に押しかけたりするという社会的な描写もあり、リアルな人々の精神状態の変化も分かります。
最後に、なぜこの一人に犯人を絞ったのかという点と、犯人がなぜ連続殺人を行ったのかという動機は明らかにされておらず、読後感は物足りませんでした。
内容を少し(犯人のネタバレなし)
起承転結の「起」
旧田園都市ホームデイルに住むコルビー氏の息子ライオネルは、学業とスポーツに優れていたが、ある日ボクシングの試合後に失踪し、冷たくなった遺体で発見された。
警察はライオネルがナイフで腹部を切り裂かれたと判断し、犯行現場と遺体発見現場が同一であることを突き止めるが、動機は不明のままだった。
その後、犯人「ザ・ブッチャー」から犯行声明が届き、次に町の有力者パメラ・リチャーズが犠牲となる。警備を強化するために多くの有力者が集まるが、その直後に第三の殺人が発生し、女性の遺体が劇場で発見された。
起承転結の「承」
スコットランドヤードのパイク警視がホームデイルに到着し、地元警察のジェフェリー本部長と協力して捜査を開始した。
地元警察は外部の指揮を好まなかったが、本部長の要請によりスコットランドヤードの支援を受け入れた。
捜査中、アルバート・ロジャースがプロサッカーにスカウトされるが、彼の死体が見つかったことや、リード医師のところで働いている調剤師マージョリー・ウイリアムズ嬢が失踪していることから、リード医師が拘束される。
だが、失踪した調剤師マージョリー・ウイリアムズ嬢の死体が犯人「ザ・ブッチャー」から届いた手紙に書かれていたとおりの場所から発見され、リード医師は釈放された。
起承転結の「転」
ホームデイルの街は再び緊張感に包まれた。リード医師の釈放により、犯人「ザ・ブッチャー」がまだ街に潜んでいると考えられたからだ。
パイク警視は対策本部で州警察と対立しつつ、次の犯行予告が届いたことで対策を講じた。パイク警視は電力会社と協力し、街中にサーチライトを設置して犯行を阻止しようと計画したのだ。
予告された日、マーケットで被害者モリーを発見し、犯人捜索に全力を注ぐが、手がかりは得られず。
さらに、ポスト付近にカメラを設置し、投函者を特定する作戦を進めた結果、新たな犯行声明が届いたので、設置したカメラの映像から投函者の身元を確認するべく郵便局長が呼び出された。
起承転結の「結」
パイク警視は、マイヤーズ郵便局長から得た情報を基に、ザ・ブッチャーと思われる容疑者を絞り込むが、決定的な証拠を掴むことができず、ロンドン警視庁に引き上げてしまう。
はたしてどうやって、犯人を逮捕するのか! ここからは全く想定していない方法で犯人を追い詰めます。(ここまで。)
著者プロフィール
1924年『鑢』(やすり)でミステリー作家としてデビュー。以後、設定や構成に趣向を凝らしたサスペンスフルな作品を数多く発表していった。1931年、ハリウッドへ渡り映画関係の仕事に就き、シナリオライターとして成功を収める。(本書の情報より)
関連作品
53年に作品集Something to Hideが、56年には『夢見るなかれ』が、それぞれアメリカ探偵作家クラブの最優秀短編賞を受賞した。
長編ミステリーの代表作に『テクノクス殺人事件』(30)、『迷路』(31)、『Xに対する逮捕状』(38)、『エイドリアン・メッセンジャーのリスト』(59)などがある。(本書の情報より)
書籍・著者情報
・形式 単行本
・出版社 株式会社 論創社
・ページ数 263頁
・著者 フィリップ・マクドナルド
・発行 2014年4月1日
〆