『その嘘を、なかったことには』 水生大海

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目次

はじめに

久しぶりに本屋さんで本を買いました。帯にはタイトルの続きが書いてあります。図書館では、こうはいきませんね。
その続きには、「できません。」! おお、タイトルから続けて読むと、なんて怖い帯だ!
発売日も割と新しい。内容は帯に書いてあったとおり「どんでん返し」の5連続でした。

物語(ネタバレなし)

01 妻は嘘をついている

妻:滝口亜珠沙(あずさ)、会社経営社長 社名はコースト・オブ・ドリームス 雑貨輸入販売
夫:滝口秀馬(しゅうま)、妻の会社の経理部門担当副社長
娘:滝口未沙都(みさと)、中一
ザジ:愛猫

夫の滝口が家に帰ると、知らない男が死んでいた。
そりゃ、驚くわな・・・。

泥棒は、妻のアトリエのガラスを割って侵入したようだ。

死んでいたのは、那由他奏 ホストクラブ・サウザンドクロス勤務

(インスタグラムのストーリーズとは、二十四時間で消える

そうなのか? そうなんや! と思う私・・・。)

妻が警察の質問に、ホストクラブ・サウザンドクロスを知っているかと聞かれた。
知っているはずなのに、知らないと答えたので、夫は妻の浮気を疑い出す。
フランスの陶磁器作家をホストクラブに連れて行ったことがあったのだ。

なじみのホストに、家の防犯システムが壊れていることを話したのではという疑いが夫の頭に・・・。

さて、副社長の滝口秀馬にも秋波を送る女性がいる。部下の大友恵麻だ。
そして、弁当の手作りも、実は社長の妻ではなくて、副社長の自分がしていることも話してしまうほど気を許していた。

恵麻は商品に係わる仕事がしたいと、社長である妻に言い続けているが、ずっと経理で不満のようだ。副社長の滝口秀馬にとりなしてもらいたいようだ。

秀馬もそんな恵麻に心惹かれていくのである。

警察から電話があり、泥棒の死因は心筋梗塞で事件性はないため捜査は終了するという。
夫としては、なぜホストがこの家に侵入したのか、妻とホストの関係が明らかになることを期待していたため、納得が行かない。

そして、秀馬はホストクラブへと向かう。そして、死んだホストが売春をしていたことをほのめかされ、ホストを買ったのは社長である妻なのか、という疑いを持った。

秀馬の見立ては、妻の浮気相手であるホストが自宅で急死して、ごまかすために男を泥棒に仕立てた。警察はまんまと騙され、泥棒の事故死でケリをつけた、というものである。

会社にいるとき、妻がふらっと出かけるようだ。後をつけるが見失った。
尾行が見破られたと思い、探偵事務所に素行調査を依頼した。

妻は間もなく海外出張予定だ。手料理を楽しむという秀馬に、部下の恵麻が食べに行きたそうなそぶりを見せる。

家に帰ると、料理をしないはずの妻がスパイシーカレーを作っていた。
実は、浮気ではなくて、料理教室に通っていたのだ。
そして、尾行を気づかれていた夫は、尾行の理由を話した。

妻が作ったカレーと筑前煮を味見したが、なかなかうまかった。
残りは冷蔵庫へ入れて、翌日妻は娘が待つイギリスへ旅立った。

浮気じゃなかったのか、と思ったとき、娘のインスタに妻の描いたデッサンが映った。
なんとそのなかに裸のホストの肖像画があった。やはりホストは盗みで家に入ったのではないと秀馬は確信した。

そんな翌朝、秀馬に気があるそぶりの恵麻が近くに来たから寄りたいという。
夫は、はやる気持ちを抑えつつ、彼女を妻のいない自宅へ招き入れた。
この先、夫に起こる数奇な運命にあなたも衝撃を受ける。

02 まだ間にあうならば

十河美南は施設ファンクラブの創始者の薫子さん、ミズタマさん、ヤマネコさんらとライブ帰りの居酒屋で、高校の同級生の沖中風香に遭遇する。
アーチストは、ビジュアル系ロックバンドのマクシミリアンである。

美南は役者、風香は飲料メーカーの広告宣伝部勤務だ。

美南はマクシミリアンのMVに出演したことを、居酒屋では内緒にしていたが、薫子さんが運営するファンの掲示板で、事前に言わなかったことに対してクレームをしつこくつける人がいた。
薫子さんに掲示板を閉鎖してもらったら、その書込み主は舞台をメジャーなSNSに移し、美南への誹謗中傷を続けた。

事務所の副社長からは、関わるなと言われた。そして、マクシミリアンのMVに出た美南を見たある連続ドラマのキャスティング担当から出演のオファーが来た。そして、これも好評。

また、風香とランチ。(ここで読者の私の勘が働く。もしかして書込み主?)
風香はリョー推し、美南はコーキ押し。友人の推しを推してはいけないルール。

皮肉なことに、美南はリョーに声を掛けられて食事に行った。
副社長にそのときの写真が送りつけられ、「美南がリョーと別れなければ、この写真を週刊誌に送り付ける」という脅迫文が同封されていたのである。

美南はリョーとのことを風香にしか言ってなかったことを思い出し、問い詰め、写真を送ってきたことを白状させた。
だが、彼女はSNSの誹謗中傷は自分じゃないと言ったが美南は怒りで聞く耳を持たなかった。

そして、読者の私は、異様に美南に親切なバイト先のカフェの店長が気になりだした。
そうか、そっちの嫉妬もあるなあ。やはり店長の線で真相が決まりかと思ったとき、
真相はさらに読者の想像を超えてきたのである! え、そういうこと!?

美南は友情を取り戻せるのか。まだ間にあうならば・・・。

03 三年二組パニック

高校の卒業式の予行練習、二回行った。

三年二組、服担任の穂高先生、主担任の小林里奈先生は休職中。
教頭に呼び止められて、「三年二組の誰かが誰かに卒業式で仕返しをする」という噂があるという。

誰なのか? 主担任の業務日誌を見てトラブルが無かったか調べてみることにした。

クラスでシカトされて二週間休んだことがある井上優唯は、きっかけを作った唐沢心美に仕返しをするのか?

発端となった二組の斎藤菜穂子の妹が、剣道部の部活時に武道場の裏で井上優唯が女の子と噂するのを聞いたという。

文月彩芽は、井上優唯と親しいという理由で、武道場の裏で井上優唯と話していたのはお前じゃないかと先生から聞かれたが違うようだ。

一方で、唐沢心美は、井上優唯にひどいことは言ってないと弁明したが、誰も信じてくれなかったという。(あれ、これが仕返しの動機じゃないか?と普通の読者なら思うはず。)

それから、噂を広めた西村ゆかりと浅沼麻子にも確認したが、問題なさそうだ。

そして家の近くの駅で降りた優唯は、彩芽と遭遇し、優唯の家で噂について話をしていると、彩芽のスマホに心美から着信があり、驚きの告白がなされた。

04 家族になろう

僕は草壁暉希(てるき、ビストロの雇われ店長)、両親はすでに他界
妻は花凛(かりん、三歳年上、大手企業チーフ、妊娠中)、他界した元県議の義父(桂坂総太郎、身分の釣りあわない暉希との結婚に猛反対直後死去)、花凛の双子兄の桂坂賢太郎(県議会議員)、その三男の魁(お受験中)、花凛のもうひとりの双子兄の雄太郎(国会議員秘書、娘婿となり国会に挑戦する)

そして、病室の義母の桂坂怜子(元看護師) という状況で物語は始まった。
やがて義母も亡くなった。享年、六十七歳。

そして、相続の件に対応することになった。
地元を飛び出して上京した花凛としては、儀父母の世話は兄たちに任せていたという負い目もあるが、性格の強い花凛は、兄たちと勝負して、母が一人で住んでいたマンションとその他一部を手に入れた。

そして、早々にそのマンションを売ることにし、遺品整理をすることになった。
花凛は急遽出張が入り、暉希が一人で遺品整理に立ち会うことになった。

そこで発見した手紙の束。
義父と義母の出会い、何通ものラブレター。義母とはぎくしゃくしていた花凛はいらないとLINEで返事を返してきたが、念のために持って帰ることにした。

そして、帰りの電車の中で、順番に手紙を読んでいく。

最後に分厚い手紙があった。
そこに書かれていたことは、衝撃であり、花凛が何故義母との関係がぎくしゃくしていたかは腑に落ちた。だが、衝撃はこの真相発見だけでは済まなかったのである。

人は、死んでからでも復讐ができる。

05 あの日、キャンプ場で

二日前、キャンプ場の渓流の中州で千鶴の遺体が見つかった。

大学生の映画研究会が、そのキャンプ場で自主製作映画を撮影していた。
男子四名、女子五名。
男子:7年生で監督の植村優佑、3年生で部長・助監督の中川匠、2年生の入間迅、1年生の富永海斗
女子:私は2年生の九条美登里、同級生の渡会亜弓と河野英梨、1年生の馬場千鶴と岩崎莉子

自主製作映画の撮影が終わり、男女九人は、三台の車に分乗して帰るはずだった。
部長と監督は、親の車を返す必要があって先に帰った。
道具を返しに行った一年生の千鶴が戻って来なかったので、女子三人が残り、ほかの男子と一年生の莉子もレンタカーを返す時間が迫っていて先に帰った。

割と勝手な行動が多かった千鶴を先輩女子らは良く思っていなかったこと、バイトの予定時刻も迫っていたことから、最後の三人も千鶴を置いてキャンプ場を出発したのだった。
亜弓は、千鶴は一度痛い目に合えばいいと言い、英梨も同調し、美登里は車に乗せられた。
一応、バスで帰れるという読みもあった。

ところが、冒頭に書いた結末となってしまった。
ショックを受けた1年生の莉子は、映画研究会を辞めた。

警察が来て、事情聴取された。
川の近くに滑り落ちた痕跡と千鶴の帽子が落ちていたことから、風で飛ばされた帽子を取ろうとして、誤って滑落したと推定され、この件は、事故で処理された。

ところが、にわかにSNSで、千鶴は置き去りにされたという書込みが噂になりだした。

美登里は、事故ではなく犯罪に巻き込まれた可能性があるから、自分らで調べると言い出し、同学年の女子である渡会亜弓と河野英梨も渋々加わることになった。

だが、警察でもない素人に捜査の壁は厚かった。美登里はひとり千鶴を置き去りにしたことを心に痛め、警察に電話し、千鶴の家族に謝りに行こうと言い出した。

それを聞いた亜弓と英梨は・・・。

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書籍情報

・形式 単行本
・出版社 
・ページ数 288頁
・著者 水生大海
・発行 2024年11月23日

著者情報

三重県生まれ。漫画家を経て2005年、チュンソフト小説大賞銅賞受賞。08年、福山ミステリー文学新人賞優秀作を受賞。受賞作は『少女たちの羅針盤』と改題しデビュー。14年、「五度目の春のヒヨコ」で日本推理作家協会賞(短編部門)の候補。「ランチ探偵」「社労士のヒナコ」シリーズのほか、「最後のページをめくるまで」「マザー/コンプレックス」などがある。(内容はこの書籍に掲載されていたもです)


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