MENU
ホーム » 書評 » 社会 » 『土漠の花』 月村了衛 第12回本屋大賞5位 第68回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞
この記事の目次

『土漠の花』 月村了衛 第12回本屋大賞5位 第68回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞

  • URLをコピーしました!

当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

目次

はじめに

ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索と救助活動にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。その野営地に、命を狙われている女性が駆け込んできて助けを求める。自衛官たちは氏族間の争いに巻き込まれてしまう。

あらすじ

自衛隊の本隊から離れて、墜落ヘリの救助隊は、臨時に編成された12人のチーム。
その野営地に駆け込んできた女性の名はアスキラ。ビヨマール氏族長の令嬢だった。
対抗するワーズーデーン氏族が攻め込んできて、一方的に虐殺を開始したという。
ワーズーデーン氏族は、アスキラを殺してビヨマール氏族を根絶やしにするつもりらしい。

その女性を守ることは自衛隊の役目なのか。自衛官たちは迷う。他国の紛争に介入することは許されていない。だが、迷っている暇はなかった。隊長が彼女らを避難民として保護すると言いかけたとき、突然、四方から銃弾が響く。どうやら周囲を囲まれたらしい。
平和ボケしている自衛隊は、戦闘態勢が取れないでいる。このままでは皆殺しにされてしまう。
この女さえ渡せば・・・。

精鋭の自衛官らは、なんとか応戦し、一旦敵を振り切った。だがそれは途方もない戦闘の始まりに過ぎなかった。
絶え間なく降りかかる敵の猛攻、体格、体力も敵が勝っている!

自衛隊が初めて戦闘し、仲間が少しずつ死んでいく。
極限状態の中での男たちは、抱える確執とも戦い、最後は友情めいた感情も生じる。
家族を思いつつ、ここで死ぬのか・・・。

広告

登場人物と死のタイムライン

墜落した有志連合海上部隊の捜索をする警備隊12名と氏族長の娘

*原田琢郎1士(斬首)
*戸川1士(被弾)
*佐々木1士(被弾)
*徳本1曹 救急救命陸曹(なぶり殺し)
*吉松勘太郎3尉 捜索救助隊隊長(被弾)
 ▼市ノ瀬1士 水泳が得意(刺殺)
 ▲新開譲曹長 隊長補佐 有能冷酷(被弾)
  ★由利和馬1曹 元ヤンキー(自爆)
  ★梶谷伸次郎士長 技術屋 (自爆)
    津久田宗一2曹 射撃の名手(重症)
    友永芳彦曹長 新開嫌い
    朝比奈満男1曹 最年長37歳
    アスキラ 氏族長の娘

*最初に襲撃されて死亡
▼逃亡中の川で刺殺
▲村で被弾
▽村で負傷
★味方のために自爆(梶谷は手榴弾で自爆、由利はバイクで特攻)

ビヨマール・カダン氏族
 氏族長の娘 アスキラ・エルミ
 縁者の女性 ビキタとダンジュマ
 (ダロッド士族系のワーズデーン小士族に追われる三人の黒人女性)

感想

月村了衛さんの本は、「コルトM1847羽衣」「香港警察東京分室」を読んだことがある。そのときも、簡単に言えば「敵と戦う」シーンの続く物語だった。文章も少なくはないのに、なぜどんどん読まされるのか。台詞の行間は無駄のない情景描写と的確な心理描写だからだろう。
戦闘シーンは、まるで映画を見ているかのようで、臨場感がたっぷり。自分が戦闘員になったような感じで、息つく暇もないのだ。だからあっと言う間に読まされてしまう。
読み終わったあとは、戦い終えた安堵と生き残ったぞという達成感に浸れるだろう。
だが、事は公にはできないというジレンマ。死んでいった仲間のことを思えば納得できない。家族にも事故死としか伝えられない現実が待っていた。
「専守防衛」の自衛隊が戦闘に参加し、他国の紛争に大きな影響を与えたことは公にはできないのである。ここまで読んでも、やはり戦争はしてはいけないし、戦闘に参加できるように法律を変えてはいけないと思うのである。今の日本は少し危うくはないか。

書籍情報

・形式 単行本
・出版社 幻冬舎
・ページ数 349頁
・著者 月村良衛
・初版発行 2014年9月20日
・分類 

著者情報

1963年生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒業。2010年、『機龍警察』で小説家デビュー。2011年刊行の『機龍警察 自爆条項』が、「このミステリーがすごい! 」第九位、第三十三回日本SF大賞を受賞。2012年刊行の『機龍警察 暗黒市場』は、「このミステリーがすごい! 」第三位、第三十四回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に『一刀流無想剣 斬』『黒警』『コルトM1851残月』など。今、最も熱い物語を書ける作家として注目されている。
(本書およびネットの情報から)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次