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この記事の目次

或るアメリカ銃の謎 柄刀一 心臓移植手術を受けたカメラマンの南美希風が、アメリカの法医学者エリザベスと迷宮入りしそうな事件を緻密なロジックで、自ら立てた仮説を証明していく、ロジックマニアの本領発揮!

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おなじみとなった南美希風とアメリカの法医学者エリザベスのコンビ。美人の(妄想)アメリカ人女性と事件の解決に協力し、いつのまにか主導しているという流れは、凡人には羨ましい限りである。

目次

或るアメリカ銃の謎

では、登場人物を把握して、犯罪が起こる背景を掴んでおこう。

登場人物

【主役】
・南美希風(みなみみきかぜ) 未婚 カメラマン、東京にある芸術大学OB
・エリザベス・キッドリッジ:アメリカの法医学者(検死官)、南美希風の心臓移植手術を成功させたロナルド・キッドリッジの娘、40代未婚

【ゲイリー・オルブライト私邸の人々】
・ゲイリー・オルブライト:領事 55歳
・ミランダ・オルブライト:領事婦人 49歳
・メリー・オルブライト:娘 7歳
・タイラー・アトキンズ:ミランダ婦人の弟 アメリカの新聞記者

・ジム・ブリストル:領事の秘書官
・バーモン:執事の男 60歳くらい
・東洋系女性:メイド 50歳手前
・シド・ハーキーズ:医務官
・ケイヒル・ザビンスキー:元検死官
・浦辺:鑑識官

【ゲイリー・オルブライト私邸の警備担当者たちと関係者】
・ロドリゲス・オーサー:警護主任 黒人 50歳すぎ
・ベネッサ・ラング:警護官 42歳
・ロバート・サンダース:警護官 30代後半
・小松義孝警部:警護官
・イーサン・マシューズ:ベネッサの元夫。

あらすじ(導入部)

在名古屋米国領事の私邸で、領事夫人の誕生パーティが開催されている最中、警護官が不審者を発見し、裏庭に追い詰めると、そこには銃殺された侵入者が木にもたれ掛かっていた。しかもその男は、追い詰めた女性警護官ベネッサ・ラングの元夫だった。

領事館近くの山で、写真撮影をしていたカメラマンの南美希風とアメリカの法医学者エリザベスは、銃撃犯を仮定して領事館周辺を捜索していた小松義孝警部と遭遇し、美希風が背負っていた三脚が銃を固定するものではないかと目をつけられ、持ち物検査をされたが、エリザベスの素性が分かると態度は軟化し、むしろ検死官として立ち会ってほしいと依頼され、領事私邸へと同行したのである。
やはり、「アメリカ人」であるという点と検死官という「身分」に、日本人は弱い。

さて、今回の南美希風は、「或るエジプト十字架の謎」のときのように「事件解決の高度な能力を認められた、北海道警の特別捜査官という位置づけ」はなく、しかも偶然犯行現場周辺で風景写真を撮っていただけの者であったが、米国領事館私邸内という事件現場の特殊性と米国の現役検死官に同行していたという点が功奏し、この場での検死カメラマンとして採用されたうえに、その貢献も認められて、捜査への発言権を獲得していく。

殺害された男の素性について、元妻のベネッサ・ラング警護官から語られた内容は、十分な離婚理由になると思われた。元夫は独占欲が強く、離婚した現在は元妻ベネッサの執拗なストーカーと化していたからである。

ここまで読んで、私は犯人を予想した。(普通に考えれば、ベネッサはこのストーカー元夫をそろそろ消してしまいたいだろう。第一案である。)

途中から登場した、領事館お抱えの元検死官、ケイヒル・ザビンスキーが、エリザベスのような部外者の検死では不十分なので、自分がやり直そうかと提案し、気分を害したエリザベスは、外に出るが、夜遅くなっても帰らないため、南美希風は警護官に捜索を依頼するという事態になった。領事館の敷地からは出ていないはずにもかかわらず見つからない。

そのため、殺害された男意外に不審者がもう一人居るという情報もあり、エリザベスが事件に巻き込まれて連絡が取れないのではと、領事婦人が推理する。

この時点で、私はこの領事婦人も怪しいと思うようになる。(部外者であるエリザベスの行方不明原因を語った点があやしい。第二案である。)

事件が膠着状態となって、二階のチャーチに集合していた関係者たち。

つぎの瞬間、シド・ハーキーズ(医務官)が、頭から血しぶきを出しながら椅子ごと転倒した。即死だった。

やはり、庭にもう一人の不審者が居るのか!?
新たな犠牲者を出してしまった領事私邸は騒然となる。

エリザベスの行方不明、新たな犠牲者、侵入者は見つからない、この状況でカメラマンの南美希風が連れのベスの身を案じながらも冷静な推理を披露する。

観察力や過去の事件の知識に加え、物理的に考える力などが試される。

少しずつ、南美希風の推理が真相を解き明かし、犯人を追い詰めていく。
犯人はどんなに追い詰められても自供しようとはしないものらしい。

最後の最後まで、推理に矛盾が生じ、破綻しないかじっと耐えているのである。

その企みや微かな犯人の期待を少しずつ打ち破って行くところを楽しんでほしい。

(外国人の名前が、すっと頭に入らない私は、こうやって登場人物を書き出してそれを見ながら読み進めます。また、今回はP12に領事私邸の見取図が掲載されており、推理のためには大助かりでした。自分が想像していた配置が正解であったので、とても気持ちが良かったです。)

或るシャム双子の謎


今回の事件について、一ページに及ぶ「まえがき(タイトルはない)」がある。
事件のはじまりのパターンについて、著者自らが語る。
シリーズものとしての整理には役立つだろう。

登場人物

今回は、主役以外は、双子(シャム双生児も)で固められている。

【主役と関係者】
・南美希風(前出、カメラマン)
・エリザベス・キッドリッジ(前出、米国検死官)
・ロナルド・キッドリッジ:エリザベスの父、久納準次郎とはニュージャージー州立病院の元同僚。

【久納家】
・久納準次郎:久納家の主、滋賀県国立医大教授(未来学)、五十四歳。
・久納早姫子:久納家の主の妻、ジェームスの若き継母、四十歳。
・ジェームス久納:元結合双生児、分離手術済、三十一歳。
・アリステア久納:元結合双生児、分離手術済、結婚しシドニーで暮らす。
・久納秀:準二郎の兄、製薬会社社長。
・早姫子の父:量子暗号通信の事業を手掛ける。

【明智家】
・明智徳一:耕助の父、久納準次郎とは前の大学では敵対していた。
・明智耕助:準次郎の助手、二十六歳。(名前の由来:明智小五郎+金田一耕助)

【膳場家】
・膳場草一:成二とは一卵性双生児、兄、フリーのルポライター、秋田在住、三十二歳。
・膳場成二:草一とは一卵性双生児、弟、古書類バイヤー、秋田在住、三十二歳。

場所

・琵琶湖の湖北にある久納邸(湖畔サテライト研究所)

時期

・八月半ば

状況

磁気嵐が地球を襲う事態の元凶たる太陽フレアの異常が予測されたため、さらなる太陽フレアの観測を行っているのである。
・また、膳場兄弟は、テレパシーの実験に協力している。

あらすじ(導入部)

早姫子が、キッドリッジを夕食に招待しようと話をしているときに、それは起こった。
スマホの画面には、 “Not Found” の文字がある。
電磁波障害か!(太陽がどうかしたのか、地球はどうなるのだ!)

そしてついに、もっとまずいことが起こったようだ。
突然、小型機が現れ、湖面へと。。。爆発音! 電磁波障害で計器が狂ったのだろう。

それによって、別荘の対岸への橋が瓦解し、山火事まで発生して孤立する関係者たち。
助けを呼ぼうにも、電波障害が地球規模で起きているならば、今は陸の孤島となったこの場所へ駆けつけてくれる警察も消防もいないだろう。


大きな密室状態が作られたのである。

そして、琵琶湖内の沖にある小島のコテージに、8人のうち、半数が自家用ボートで避難することになった。
火の手は治まらず、夜通しで監視するも、みなウトウトしはじめた。

この状態で、美希風らがいる別荘とエリザベスらがいる小島のコテージで、それぞれ一人ずつが殺害されたと相互に連絡が入る! コテージでは久納準次郎、別荘の庭では膳場草一が。
世間から分断されたうえに、美希風とエリザベスも分断されたままだ。

残った6人の誰が犯人なのか・・・
南美希風が言う 「私たちは全員殺されるかもしれません。」 !!!


しばらくして、ようやく犯人の目星をつけた南美希風のロジックマニアぶりが発揮される。
(様々な可能性を、先入観なしに仮説を立て、検証していくことで、事件は解決されるのだ。)

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柄刀一(つかとうはじめ)さんのプロフィール

1959年北海道生まれ。1994年、鮎川哲也編『本格推理3』に「密室の矢」が初掲載。1998年『3000年の密室』で長編デビュー。(本書の紹介文より)

著者の作

近著に、『ifの迷宮』『密室キングダム』『密室の神話』『ミダスの河』『流星のソード』『ジョン・デイクスン・カーの最終定理』などがあり、今作は『或るエジプト十字架の謎』『或るギリシャ棺の謎』に続く“国名シリーズ”の第3作である。(本書の紹介文より)






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