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できない男 額賀澪 30歳になっても、自分がどうしたいのか、どうなりたいのか分からない。

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責任と覚悟を避けてきた男たちに未来はどう応えるのか。何もしないヤツには、何も起きない!

目次

内容紹介

ほら、何も起きない!

舞台は、千波市(勤務先)、夜越町(実家)

芳野壮介:主人公、28歳、小さな広告制作会社・小鷹広告に勤務
秋森彩音:夜越高校の同級生、千波市の大手食品メーカー勤務
南波仁志:有名デザイナー、46歳
宇崎つぐみ:合コンで知り合う

兄と嫁
 芳野圭介:壮介の兄
 亜実さん:圭介の新妻

高校では、目立たなかった芳野壮介が勤める小さな広告会社に、高校の同級生だった秋森彩音の会社から夜越町に作られる農業テーマパークの広告コンペへの参加要請を受ける。

当時好きだった彩音からの突然の業務連絡で、舞い上がる壮介は自ら手を挙げてコンペに参加するが、そこには有名デザイナーの南波仁志の姿があった。

覚悟できない男

河合裕紀:有名デザイナーの南波仁志のデザイン会社のアートディレクター、32歳

賀川尚之:イタリアンレストランのオーナーシェフ、夜越町のとなり、宮中市に住んでいたことがある。

合コンした子とは、いつも一回食事に行ったら終わりの河合を賀川がからかう。
河合は、夜越町に作られる農業テーマパークのブランド価値を高めるよう南波社長から指示されていた。
河合は、後輩の竹内春希と南波社長の妻の美里さんに見送られて、夜越町へ泊まり込みで仕事に行く。

壮介の好きだった秋森彩音は、都会育ちの河合と付き合い出したようだ。
そして、いつのまにか、もてない賀川と芳野は、仲良くなる。
賀川が都会育ちの河合に『自己肯定感って、子供の頃の成功体験が源じゃないですか。大人になると自分を変えるチャンスって、びっくりするくらいないし。』という。
『自分を異なる環境に置く(受験、クラス替え、部活、バイトなど)チャンス』は、大人になると、たしかに、ない。。。

それを聞いて、そんなもんかなと余裕だったはずの河合。
テーマパークの記者発表が行われるころには、狭い地元民の間では、秋森彩音ちゃんと都会のデザイナーが付き合っている噂は広まっており、地元民らは、彼らの結婚は間近だと思い込んでいた。
記者発表会のあと、社長の南波と河合と芳野が、飲んでいると、地元のおじさん三人に声を掛けられた。その一人は秋森彩音の父で、河合は結婚のことを確認された。

河合は、「移住」という単語と「地獄」という単語が頭に渦巻いてパニックになった。
やはり、都会の人が、田舎の娘と結婚して、さらに移住してマスオさんになるなんて条件付きの場合、「地獄」という単語が浮かんでもおかしくはない。

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八つ当たりです

結婚一年半の兄から、離婚の相談をされる壮介。
両親は、壮介が携わるテーマパークについては、夜越町としては背伸びし過ぎだという。のちのち、うまく行かなくなる、という意見だ。
なんだか、芳野兄弟の人生のような話である。

壮介は、やっと市の広報誌の表紙デザインのコンペで勝利して喜んだのもつかの間、「斬新すぎるデザインより以前のデザインがいい」という市民からのクレームで、結局、広報誌の表紙は以前のものに戻すことになり、落ち込んで帰宅した。

タイミング悪く、帰宅すると、兄の離婚話が両親にバレて、両親と兄が対峙している場面に遭遇した壮介は、自宅近くの河合のアパートに逃げ込んだあげく、南波社長の仕事にケチをつけてしまい、河合に「南波社長を舐めるなよ」と睨まれ、八つ当たりを詫びた。

河合の言った通り、テーマパークは大盛況となり、壮介の母もそこのレストランに転職したほどである。そして母の同僚となったのが、かつてデートをした、宇崎つぐみである。母のちょっかいで、またつぐみとデートした壮介は、つぐみを自宅へ送ったとき、「あなたとは住む世界が違う」みたいな別れのようなことを言われてしまった。また、ミスったのか!?

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南波仁志め

河合裕紀、竹内春希、芳野壮介の三人は、社長からプラスアクアのパッケージリニューアルで、社内コンペを指示された。河合は同じ案件で六年前に敗北しているトラウマがある。

河合は、賀川と「アグリフォレストよごえ」に行った。なぜ?
東京からシャトルバスで二時間で、ちょうどいい感じだった。
ここで、賀川と河合は自分を見つめ直す時間を過ごしたようだ。
「料理が美味しいだけじゃ、店ってやっていけないんだなあ、・・・」と賀川。
では、どうしたらいいのだろうか。読者はその答えが書いてあるかもしれないと期待して、続きを読む。

そして、話は河合が賀川の店のブランディングをするという方向に行く。要するに宣伝して、人に来てもらわないといけないのだ。
はたして、河合の支援は実を結ぶのだろうか。

文化祭の準備

相変わらず、壮介は市の広報誌のつまらないデザインを、クライアントの指示通りにデザインしつつ、南波のオフィスのコンペ作業で毎週東京に行くので、本来の職場では、いい顔をされていない。というか、そんなこと、許されているのも不思議な話だが、壮介はついに、竹内春希から自分の仕事に対して、「結構好きだけど・・・」と言われて喜ぶのだった。

そうかと思えば、母の同僚となった宇崎つぐみから、職場での母へのお礼までメッセージをもらい、「あなたとは住む世界が違う」と言われて別れ、疎遠になったはずが、勇気を出してお誘いの返信をしたのだった。
 
壮介は南波社長から出されたコンペを竹内春希と組むように指示されていたが、それぞれ別々に案を検討していた。竹内春希は、地方デザイナーの壮介の才能をあてにはしていなかった。だが、別の案件で、酷いクライアントから難題を押し付けられ、プライドも傷つけられた竹内春希と壮介は、一転意気投合し、徹夜でデザインを練り上げた。まるで徹夜で文化祭の準備した後みたいだった。そういえば、わたしもそれに近い感覚を味わったことがあるような気がするが、何かは思い出せなかった。

壮介も運が向いてきたか、今夜は宇崎つぐみさんとデートらしい。

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責任

南波社長が結論を告げた。「春希と芳野のデザイン案で行く!」
そして、南波社長は、驚く河合に、そろそろ独立したらどうだ、と提案してきた。
『河合は『覚悟できない男』だと、前にも言ったろ』と社長が言う。

河合は、自分の毎日は充実してると思っていて、満足感もあるが、先のことは深く考えていない。でも、それは、自分を誤魔化しているのだろうか。

そして、再び社長に捕まった。独立の件、どう?
社長は容赦ない。「河合がほんとうに好きなんは自分。自分を一番にできない状況に息詰まるんでしょ。」と言う。
あたりだ。二俣掛けられてショックで恋人をつくらないというのは、新しい恋人との将来にあるいろんな「責任」や「覚悟」から逃げ出す口実だと悟る。

河合は、新宿から歩いて、賀川の店に到着する。歩きながら、いろいろ考えたのだが、結論は出なかったが、賀川の思いもよらぬ発言で、未来(結論)が見えた。

できない男


賀川は都心の店をたたみ、河合は独立して、ふたりとも夜越町に移住してきた。
壮介の会社もある。
人生の決断について、壮介は河合や賀川の話を聞いて考えた。
自分も、つきあってるような、そうでないような、宇崎つぐみさんとの関係や仕事のことなどを思いめぐらし、ついに一歩前へ出る決心をした。と、読者の私は思ったのだが。。。

河合の仕事の協力ということで、壮介はつぐみさんとの撮影用広告のためウェディングの新郎新婦の役を夜越町のテーマパークでやることになる。

できなかった男も、いよいよ一人前となるか。もう、これを本番にしちゃえというヤツも出てくる始末。
このまま地元で幸せに暮らすイメージが十分にできて、ハッピーエンドになりそうと思ったとき、事態は急変するのである!

是非、結末は読んでお楽しみください。

額賀澪さんのプロフィール

1990年茨城県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。(本書の紹介文より)

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著者の作品

本作品は2020年3月第一刷発行。
2015年に「ヒトリコ」で第16回小学館文庫小説賞、「屋上のウインドノーツ」で第22回松本清張賞を受賞。「イシイカナコが笑うなら」「競歩王」「タスキメシ -箱根-」など著書多数。(本書の紹介文より)

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