この二つの企業に共通する課題へのアプローチ法や仕事術を比べることで、一社独自の事例研究では見えてこない、それぞれの仕事術の本質を浮き彫りにします。
資料作成
[Google流の仕事術]
・資料はみんなで作成する。
仕事は先延ばしにはせず、上司にチャットで連絡してでも結論を出す。
議事録も参加者全員で書き込みながらその場で作成してしまう。あとで確認不要。
[トヨタ流の仕事術]
・資料はA3一枚にまとめる
八つの項目で構成されたフレームワークを使うそうです。
- 問題の明確化
- 現状把握
- 目標設定
- 要因解析
- 対策の立案
- 対策の実施
- 効果の確認
- 標準化・管理の定着
この流れは、一般の会社でも行われている「小集団活動」の一種とほぼ同じ流れになっていますね。ごく普通のことかと思います。
情報共有①
[Google流の仕事術]
・「アイデア」を共有する
- 経営情報の共有
- スニペッツ(それぞれのチームのメンバーが直近で成し遂げたことや次週に取り組むことなど)の共有で競争心を刺激する。20%ルールで担当チーム外の優秀な人材が支援の手を挙げてくれる。
- 新規事業の立ち上げの準備体操はスプリントで。成果を出した事例をリサーチし、成功のポイントを三分間でプレゼンする(全員)ことで、アイデアを生み出す視点を養う。
[トヨタ流の仕事術]
・「ミス」を共有する
- ミスは仕事の質を高めるチャンスとらえよ。(人を責めるな、しくみを責めろ)
- その上で、チームで問題解決と再発防止につとめよ。
情報共有②
[Google流の仕事術]
・フラットな組織で、自分の意見を聞いてもらえそうな気がする。
・全社員でミーティングする。
[トヨタ流の仕事術]
・互いに盗んで切磋琢磨する。
・部署の垣根を越えて共有する。
・職場の総合力が高まるしくみを考えたら貢献度が評価される。
プロジェクト進行
[Google流の仕事術]
・部活ノリでプロトタイプをつくる。プロジェクトが進行した場合も作業の修正が少ない。
・斬新なアイデアほど理解されにくいから、形にすることで協力が得られ易くなる。
[トヨタ流の仕事術]
・社風でプロトタイプをつくる。
・議論せずに、まずやってみる。(余力があるからできるワザとは思う)
・決められた仕事をこなしているだけでは、仕事をしてるとは言えない。
仕事=作業+改善である。
社員コミュニケーション
[Google流の仕事術]
・食堂でコミュニケーションをとる
[トヨタ流の仕事術]
・現場での距離を近くしてコミュニケーションをとる
どちらも、コミュニケーションを取りやすい環境を作ろうとしている点では同じと言えます。
モチベーションアップ
やり方は違いますが、どちらのモチベーションアップ術も、最高のパフォーマンスを発揮するために必要です。
[Google流の仕事術]
・個人を動きやすくする 20%ルール 創造的な人間にとって自由とモチベーションはとても大切であり。最高のパフォーマンスを発揮する原動力である。
[トヨタ流の仕事術]
・みんなを動きやすくする
・仕事の目的やゴールを明確にすると、作業者は安心して全力で仕事ができる。
・タスクや評価基準を明確にし、誰がやっても同じ成果がでるように改善を続ける。
チームビルディング
[Google流の仕事術]
・一年間に渡る調査の結果、個々の能力の高さがチームの成功条件となっている事実は認められなかった。
・誰もが気兼ねなく発言できているチームは、メンバーの能力の合計以上の力を発揮する。キーワードは、「心理的安全性」
・グーグルでは、個人の人間性を披露する機会を設け、チームビルディングを進めているとのこと。この内容は個人情報を自らさらけ出しているので、これが強制的な文化になったら、ちがうなとは思いましたが、そうではないと信じます。
個人的成功を目指す人が、チームを壊す。「自分がいなければ・・・」という思い込みは、組織にとってマイナス。自分がいなくても仕事は回っていることを認識して、しっかり休暇を取る方がよいと考えています。個人的成功は必要ないのです。
[トヨタ流の仕事術]
・複数の異なる工程を担える「多工能」を組織的に育成し、状況に応じて工程間で応援・受援を可能にした。
・QCサークル活動で成果を求めていません。メンバー同士でアイデアの優劣をめぐる競争が起きてチームワークが損なわれます。
・仕事ができた人は、自らの仕事の仕方を開示し、個人主義に歯止めをかけます。そしてチーム力を向上させます。
成果の出し方
[Google流の仕事術]
・現状の10倍の成果をめざす
・アイデアを規制しない
・ロジカルシンキングでは、10倍は生み出せない。直感だ。
・Todoリストを捨てろ、まじめに働いて生産性の低い日本人!
[トヨタ流の仕事術]
・問題の改善を通じて成果を出す
・あるべき姿と現状の差を問題と捉える。こんなの当たり前ですけど。
・なぜを五回繰り返す。これもなぜなぜ分析の当たり前です。
コーチング
[Google流の仕事術]
・「横」コーチングする。
とは?
上下の関係なく、意見を言えるという意味らしい。わかりにくい。反対の意味に見える。言葉が足りない。上下関係の人とでも気楽に(横の関係のように)意見を言えるということらしい。
・上司と部下が定期的に1対1での面談を行う1on1ミーティングで、仕事観や人生観を聞き、部下の成長やチームの飛躍につなげます。これって、日本でも昔やってたような家族ぐるみの付き合いとかに似てる気がする。時代に逆行しているのか、古き良き日本の良さにGoogleが気がついてしまったか。それなら、日本も速くその動きに合わせないと、もともと持ってた文化なのに、また取り残されてしまった、なんてしゃれにもならないオチがつく。
[トヨタ流の仕事術]
・答えを教えない。そう、でもこれって、コーチングのセオリーですけど。
・人は自分で答えを出せば、納得した状態で行動に移せる。これも、同上だ。
アウトプット
[Google流の仕事術]
・生産性を高めるためには、「集中力」「エネルギー」「感情」を管理する。
グーグルの仕事術で有名なのが「スプリント」:重要課題に取り組む前に実施する、開発・検証プロセスのこと。
わずか五日間で集中して実施する。締め切り間際で集中する感覚。
この条件下の場合、個々で考えた方が、ブレーンストーミングより良いアイデアが出るそうです。閉塞感のある部屋で、デバイスは持ち込まず、3時間実施+1時間休憩+3時間実施を五日間やるらしい。
これは、集中力と体力、気力が求められます。修行のようでもある。
こつは、メンバーを7人以下とし、業種も混合させることで、思い込みを打ち砕くアイデアを出させます。
・前向きな休憩時間を過ごす。日本人は休むのが下手くそと言われているからちょっとくやしい。
[トヨタ流の仕事術]
・「しくみ」でアウトプットする。どうも日本人はしくみが好きなようです。ムダを無くすとかポカヨケなどをする。このしくみを明文化し、人間を機械の一部のように働かせようとしているのです。このやりかたで成果が出ているということなので文句はありませんが、直感的にもう少しいい方法があればなと思います。
人材育成
[Google流の仕事術]
・「EQ(情動知能)」で人材を育成する。
卓越したリーダーとは、「大きな野心」と「謙虚な態度」を併せ持つ人のことらしい。グーグルがそう言ってるとは驚きだ。謙虚!これには「思いやり」さえ必要と説いている。競争相手を蹴落として行くのが西洋スタイルだと思っていたら、これも昔のよき日本と入れ替わっている。大丈夫か、日本! 日本が西洋の考えを取り入れて、これで良しと思っていたら、いやいや、もともと君たちが持っていた文化のほうがいいんだよ、って言われているような感覚になる。手柄を横取りされたような気がして、これもちょっとくやしい。
EQは、「マインドフルネス瞑想」で注意力を鍛えることから始まります。
[トヨタ流の仕事術]
・「人事異動」で人材を育成する。ちょっとグーグルより荒っぽい気がするが、反対ではありません。エース級を外に出すことで、残された人に成長の機会を与えるのです。異動するエースは大変ですが。
業務改善
[Google流の仕事術]
・物事の本質や目的から外れることに、いたずらに時間や手間をかけない。
・予定はカレンダーで調整、メールは使わない。そんなこと、もうやってますよね。
[トヨタ流の仕事術]
・ムダとりはトヨタの代名詞。ムダなことをしない、のではなく、ムダを取り除く。言ってることはグーグルと同じようだが、何かが違う。トヨタの方が厳しいのかな。グーグルは発想の転換って感じですかね。トヨタは日本人的まじめさのたまものでしょうかね。
社員評価
[Google流の仕事術]
・「社員同士」で評価する
横の評価を制度化し、社員同士の信頼関係を深め、組織内の「心理的安全性」を高める。
・ミッションに対する成果と同様に、献身的な仕事をしている人や職場の空気を良くし、組織を下支えしたりする人の努力も報われるべきですが、こんな考え方をする人たちだったのですか!というのが正直わたしの感想です。まさか褒め合う文化って、日本にもあったのでは。。。
[トヨタ流の仕事術]
・「人望」で評価する
どれだけ優秀な部下を育てたか、後継者を育成したか
部下の見本となり慕われるような人間性を併せ持つことが必要
「人間力」のある好行動は、つぎのとおり
- 自分以外の誰かのために頑張る
- 自分は出来ていないと理解し、学ぼう、成長しようと努力し続ける
- 相手を思いやり、当たり前のことを当たり前にできる
プロフィール
株式会社OJTソリューションズ
トヨタ自動車とリクルートによって設立されたコンサルティング会社。ベテラン技術者(全員が管理職経験者)が「トレーナー」となり、トヨタ時代の豊富な現場経験を生かしたOJTにより、現場のコア人材を育てている。『トヨタの片づけ』(KADOKAWA/中経出版)、『トヨタ 仕事の基本大全』 (KADOKAWA/中経出版)など多数の著書を持ち、シリーズ累計85万部を突破。
桑原 晃弥
若松義人氏の会社の顧問として、トヨタなど数多くの企業を取材し、書籍類の制作を主導。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾスなどIT企業の創業者などの研究も。著書に『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP研究所)、『トヨタ式「すぐやる人」になる8つのすごい! 仕事術』(笠倉出版社)、『ウォーレン・バフェット成功の名語録』(PHPビジネス新書)など著書多数。
井上 真大
京都大学大学院情報学研究科修了。日本人で初めて新卒でGoogle本社にソフトウェア・エンジニアとして採用され、社内で上位数パーセントの最も高い評価を得た後、株式会社ミライセルフ(現株式会社ミツカリ)を創業。著書『Googleで学んだ 超速 パソコン仕事術 誰でもすぐに使える業務効率化のテクニック81』(SBクリエイティブ)。
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