女のいない男たち 村上春樹

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6つの(なんか不思議な)短編小説集

珍しいことに、「まえがき」があり、しかも「本人のまえがき」がある。

ちょうど本一冊となるように、6~7本を1日に集中して書くらしい。

商業的な話です。

別のメリットは、一つのモチーフで一貫して書けること。今回のモチーフは「タイトル」のとおり。

タイトルからヘミングウェイの”Men Without Women”を思い出すかも知れないが、日本語訳のタイトルは、「男だけの世界」で、本作品とは趣が異なる。

本作品は、村上氏自身のこと(メタファー:隠喩)又は、予言のようなものらしい。
音楽で言えば、コンセプト・アルバムだとか。

では、順に見ていきましょう。個人的な感想もちょこっと。

ドライブ・マイ・カー

まず、車の運転に関する男女差の一般論。概ね私の意見と一致している。
村上氏の作品は、たまにその傾向があり、私が好む理由かもしれない。

性格俳優の主人公と無口な専属ドライバーのみさき。妻も女優だったが、共演者と関係を持つタイプだった。
妻の死後、妻の不倫相手の男と飲みに行き、何故妻がこの男と関係を持ったのか、自分に何が足りなかったのかを調べようとしたことを、みさきに語るが、

彼女の答えは「奥さんはその人に、心なんて惹かれていなかったから寝たんです。女の人にはそういうところがあるんです。」と言った。

僕らはみんな演技をする。舞台に立って、いったん自己を離れ、また自己に戻る。しかし戻ったところは正確には前と同じ場所ではない。

深い。というかパラレルワールドのようなことをおっしゃる。

イエスタディ

関西弁のイエスタディの話がイントロ。

東京育ちで完璧な関西弁を話す「木樽君」と逆の主人公。

主人公は木樽君から「自分は浪人中のため、大学で遊んでる彼女が、他の男と遊ばない様、代わりにつきあってくれ」と頼まれる。

16年が経ち、木樽君はアメリカで鮨職人になった。

「二人は、まわり道をしているのかも知れない」

人生の不思議さを感じた。

独立器官

主人公は52歳の渡会医師。美容整形科のため、女性と知り合うことが多く、彼は彼女らのナンバー2の恋人である。

そのような彼が本気になった。

そんな彼も利用されただけ。

独立器官とは、そのあと心が抜けた死んだような彼の体のことである。

シェエラザード

羽原は31歳で、彼女(看護師のような)は35歳。勝手にシェエラザードと名付ける。

彼女は主婦で子供も主人もいる。ハウスに居て外出できない(しない?)羽原のために食材を届け、性欲の処理もしてくれる。こんな都合のいいことがあるはずなかろう、というところが村上春樹さんらしいでしょうか。

彼女は前世のことが分かる。自分はやつめうなぎだったという。

彼女の話の続きをベッドの中で聞きたくなる羽原は、いつしかこの状況を失うことを悲しく思うのであった。

木野

もっとも村上春樹らしい作品と感じた。

現実ではない不思議の国へつながっているようなバーの話だ。

木野という男は妻に浮気され、離婚し、会社も辞めて、伯母から青山にある喫茶店付き一軒家を手に入れ、バーに改装し、営業開始。

神田(カミダ)という男が常連となった。客のいざこざを解決してくれるなど不思議な力を持っていた。

そして、別のカップルが来るようになり、カミタはその連れの女がひとりで店に来た時に関係を持ってしまう。体には、煙草のヤイトの痕があった。

店は順調かと思われたが、秋になり様子が変わった。

猫が居なくなり、蛇が三匹現れた。

久々に来たカミタは、「この店は残念ながら多くのものが欠けてしまった」と言う。

カミタは、伯母に木野を守ってくれと言われているらしい。

バーは、彼が現実から逃避するところであった。彼の心の奥底でもあった。

女のいない男たち

夜中1時に、昔の恋人の自殺を知らせる電話が、彼女の亭主からかかってきた。

ただそれだけの電話。

14歳のころの恋、消しゴムを半分くれた。自ら命を絶つようなタイプではない。

そしてあるときには、一人の女性を失うというのは、すべての女性を失うことでもある。

・・・

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