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『パレードのシステム』 高山羽根子 を読んで 書評・感想

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目次

プロローグ

美術家の私は、祖父の自死をきっかけに実家のある地元に帰ると、従姉妹から祖父が日本の植民地だった戦前の台湾に生まれ育った「湾生」と呼ばれる子どもだったと知らされる。 日本統治下の台湾について調べていて、知人の台湾人に話を聞いているうちに、その人の父の葬儀に誘われて台湾を訪れることになる。

登場人物

おじいちゃん(日本領台湾出身)の家
 ・京子おばさん:おじいちゃんの先妻の子、先妻の姉がどこかにいる
 ・京子の長女・まあちゃん

別の家
 ・父 犬のロビンの世話役
 ・母 おじいちゃんの娘、京子姉さんとは腹違いの妹

また別の家
 ・私 二十代後半、両親とは別居、美術大学生

高校の同級生
 ・中村結

大学の友人
 ・小林カスミ、ワタシの作品について語れた唯一の人、もう亡くなった

ギャラリーカフェのバイト
 ・梅さん、台湾から美術の勉強をしにきた。

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あらすじ、感想

おじちゃんのお葬式で、おじいちゃんの家に、十年ぶりくらいに訪問した。
そこで、主人公の「私」は、お葬式という風習は、各地でバラバラなんだろうな、ということを考える。

どうやら、おじいちゃんの死に方(自死)がよくなくて、魔除け・厄除けの意味もあって、身内だけで執り行われたらしい。

主人公の「私」は、以降「ワタシ」で記述して、読者のわたしは、「私」で記述します。

ワタシは、スケッチブックを持参していて、考えた事、見たもの、思いつき、それでもやらなかったこと、などを書きとめるらしい。それが好きで、救いになるらしい。

ワタシは、おじいちゃんの葬儀に立ち会い、いとこから、おじいちゃんは台湾で生まれたという話を聞いてしまった。

ワタシは、亡くなったおじいちゃんのことをもっと知りたくなって、台湾から来た旧知の梅さんを訪ね、台湾についての話を聞いた。

ワタシの美術家としての初めての海外展示は東欧の国際芸術祭だったが、思いのほか大きく、レベルも高そうで、あらかじめ知っていたら参加をためらっただろう。

友人のカスミは私の作品の中の自分に似た肖像画の出展を辞めるよう頼んできたが、ワタシはカスミを描いたわけではないと、頼みを聞かなかった。

当時、半年くらい美術学校に来なくなっていたカスミのアパートへ行くと、ピタゴラ装置のゴールで、カスミは死んでいた。カスミはピタゴラス装置のような美術作品を作っていた。死をも作品のごとく演出したというのか。

梅さんが、父の葬儀で台湾に帰省するから、台湾に来ないかと誘われて、行くと返事をしたのは、自分のおじいちゃんの足跡を見つけ、気になって追っているうちに、画家だったという梅さんのお父さんのことが気になってしまっていたからだ。

似ているようで、日本とは、いろいろな風習が違うようだ。そして沖縄より南にある台湾の植物は大きくて、それだけでも風景は変わる。

台湾占領当時、日本は、日本に敵対する部族の顔をよく覚えている少年らを使って、彼らを炙り出した。

ワタシが台湾に来た理由の一つを梅さんに話すことにした。
「私は、自分の作品によって友人を死なせました。」

ワタシは、その影響で学校を辞めたが、そのあとの制作があまりできていない。

さて、梅さんの父の葬儀だが、鼓笛隊のような派手な合唱隊、葬儀用のトラックは、蓋が開いてステージに変わった。と、ここまで読んで、まさか「パレードのシステム」とは、このことか?と気が付いた。ここだけ見れば「葬儀の流儀」のような感じだが、小説全体としては「人生の不思議な運命」とでも言えようか。

そのパレードには、かつては、ダンサー、マジシャン、ストリッパーまで呼んだらしい。

台湾の葬式は、そういうシステム(流儀)だったのだな、と私は思った。

ワタシは、梅さんのお父さんの葬儀には参加できなかった。

なぜか、ワタシは、自分の首が、私の叫びとともにスポットライトの中でごとりと落とされたら、ここにいるたくさんの人たちはどうふるまうだろう、と妄想する。そして、その顔がパレードの中を転がっていくというような妄想もする。

ワタシのこの妄想も、ワタシの作品のイメージなのかも知れないと私は思う。いかなる時もワタシは美術家なのだ、きっと。
ワタシは、生と死のぼやけた境界を認識していたようだ。

この小説は、日本の葬儀と台湾の葬儀、戦時中のしきたりなどを通して、人生(パレード)の不思議な運命(システム)を、美術家の目から見させた文学だ、というふうに、解釈した。

著者プロフィール

1975年富山県生まれ。2010年「うどん キツネつきの」で第1回創元SF短編賞佳作を受賞し、デビュー。2015年、短編集『うどん キツネつきの』が第36回日本SF大賞最終候補に選出。2016年「太陽の側の島」で第2回林芙美子文学賞を受賞。2019年「居た場所」で第160回芥川龍之介賞候補。「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」で第161回芥川龍之介賞候補。2020年「首里の馬」第163回芥川龍之介賞受賞。(本書の情報より)

心に残る名言、話

生きている人が酒を飲み、涙と汗を流す一方で、死んでいる人が水分を失っていく祭りが、お葬式というものだ。

書籍・著者情報

・形式 単行本
・出版社 講談社
・ページ数 176頁
・著者 高山羽根子
・発行 2023年1月24日


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