『 偶然にして最悪の邂逅 』 書評・感想

  • URLをコピーしました!

当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

著者 西澤保彦 書評・感想

レビュー

目次

展開、見どころ

ひとを殺さば穴ふたつ

むかし、母娘が、金持ちの男から金をだまし取ろうと、狂言誘拐を演じた。
母は身代金を犯人に届けるていで、金を運ぶ途中で、金は共犯の男に渡した。
ところが、母は途中で、交通事故にあって死んでしまった。これは大変!
娘は誘拐されていたことを演じきり解放された。

娘は金のありかをつきとめ、40年近く経ったいま、共犯の男の甥っ子をたぶらかして、金のありかの地面を掘らせていた。

穴が掘りあがったので、甥っ子に毒をのませて後始末した。娘は甥っ子に抵抗されて気絶。

むかし殺されたもう一人の共犯者の男が、金のありかの穴から幽霊で出てきて、今死んだ甥っ子と話ながら、昔の母娘の犯罪を解明してしまうというへんちくりんな話だが、会話が面白くて読まされてしまった。気絶した娘に憑依して、体を弄ぶのはミステリの本筋ではないとして、警察に自首するオチはまあ面白いかな。

リブート・ゼロ

圭織(母)
 紗智子(娘) ― 健吾(夫)
 栄一(息子) ― 悠理(嫁)

圭織と、悠理と、健吾とが、ただならぬ仲となっていた。
紗智子は、自分の夫の健吾と弟の嫁の悠理が出来ていると思って、罠をしかけた。
友人と一泊でゴルフに出かけたのだが、それは夫を油断させるためだった。

自分の留守中に、必ず女を連れ込むと考えた圭織の娘の紗智子は、こっそりと自宅へもどる。
女子大生と浮気していると思い込んでいた紗智子は、三人をベッドの上に発見して、絶句し怒りで襲い掛かったので、夫である健吾が、紗智子を手にかけてしまった。

そのときの娘の紗智子の抵抗で頭に怪我をした圭織を健吾が車で、自宅まで送った。
圭織は自宅で暴漢に襲われて頭を怪我し、健吾は仕事から帰ると妻の紗智子は首を絞められて殺されていた、ということにするのだが、・・・。

ひとり相撲

露久保柾海は、曾根郁奈に操られて、何人もの男を殺してしまったと思っている。

宇徳真治郎、峯村健也先生、下舞富雄、両坂静流など。

その話を、教え子の日渡香菜美に、病床のベッドで語る露久保。
ほんとうは、自分は殺していないのに、夢で何度も曾根郁奈との共犯シーンを見て、だんだんとその気になっていくという変なストーリーだ。

曾根郁奈は、夫の両坂静流を殺してくれと頼んだものの、自分はハワイで交通事故で死んでしまったらしい。

そして、ついに両坂静流殺しの犯人が逮捕された。これで露久保の無実は証明されたはずだが、露久保は、またしても変な妄想に憑りつかれる。この男はもうだめなやつだ。

間女の隠れ処

まずは、登場人物の紹介。以下三人の男は還暦前である。
トーマスこと徳増大希、エンタメ系作家
ダバダこと太葉田恒、洋風居酒屋「たばたん」のオーナーシェフ
ユーゾーこと名雪絢也(語り手)
そして、立道香代は、名雪絢也の彼女で、特養ホームの介護士

エンタメ系作家の徳増大希が、元々作家志望だった友人らに、新作推理小説の感想を求める場面から始まる。
時は大晦日、場所は、友人の太葉田恒が経営する洋風居酒屋である。

と、ここから小説の中の殺人事件を二人が読みながら、昔の謎だったことが明らかなっていく
小説のタイトルは「間女の隠れ処」

その書き出しは、「黄瀬あやめの死因は窒息。頭部の裂傷や頸部の索状痕からして先ず鈍器のようなもので殴打されて抵抗力を奪われたうえで、紐状のもので絞殺されたと考えられる。・・・」
登場人物として、知っている同級生などが実名で出てくる。

そう、この小説原稿は、実は昔あった事件について、それに携われなかった徳増大希が、その事件に携わったであろう友人の二人に、自分の推理を聞かせて、真相を明らかにするのが目的だった。

読み終わった今も、ややこしい話だと思うし、自分が刑事なら、自分の価値観では事件は解決しなかったと感じる。

偶然にして最悪の邂逅

高校生が廃屋になった旧校舎からの「中学時代の女子教員に対する”のぞき”」から不思議な事件に巻き込まれた。

今は、作家の徳増大希先生とわたしこと河原井は、特養ホーム<もみのさと荘>の談話室。

どうやら、河原井が徳増に昔の事件について聞きながら、小説のネタにしようとしているということらしい。

時は1979年の夏か。40年前に遡る。問題のあの夜に目撃した情景。丁度、わたくしが大学に入ったころ。メインストリートにあった貝沼建築設計事務所で経営者の貝沼の死体が発見された。

それと並行して、高校生になった河原井と友人が廃屋になった旧校舎からの中学時代の女性教師のアパートの覗きに明け暮れていると、その女性教師のアパートに、貝沼の事件に関係する人物が訪れたのを目撃した。
この事実は、その人のアリバイを証明するものだが、警察に通報することは、自分たちの覗きも暴露されるので当時言えなかった。

40年経過した今になって、冤罪の罪で投獄された男が、河原井といっしょに覗きをしていた友人と知り合い、友人が昔の思い出話として聞いた廃校での覗きの話をしたことから、男は自分の身の潔白を、いまさらながら証明したいと考えて行動を起こした、という話を作家の徳増先生に話していくのである。
さあ、40年ぶりに解明された?徳増先生が考えたストーリーは真相なのか。

著者プロフィール

1960年高知県生まれ。アメリカ・エカード大学創作法専修卒。第一回鮎川哲也賞最終候補を経て、95年『解体諸因』でデビュー。<腕貫探偵>シリーズや、『七回死んだ男』などSF要素のある本格ミステリで人気を博す。近著に『夢の迷い道』『沈黙の目撃者』『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』『悪魔の牢獄』などがある。(本書の情報より)

広告

書籍情報

・形式 単行本
・出版社 東京創元社
・ページ数 274頁
・著者 西澤保彦
・発行 2020年12月11日



よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次