『三つのアリバイ』 鯨統一郎 紹介
本作品は、女子大生 桜川東子シリーズ全９巻の完結編である、らしい。
はじめに
今までに鯨統一郎さんの本は、ミステリーに限ると８冊ほど読んだことがあった。ブログを始める前なので記事はありませんが、桜川東子さんのことは覚えています。
そのスラリとした姿勢で、変なおじさんたちの間違った推理をみごとに修正してくれたものです。
さてさて、今度の推理は、どんなんかな？
軽妙な語り口、流れるようなボケとツッコミ、実際に飲み屋で聞いているような会話がリズム良く続くので、あっという間に読めてしまいます。
あらすじ、感想
三つのアリバイ
あっ、そうだ、いるかちゃんもいるんだった！
くじら（作者）にいるか！、と誰もが最初に思うのだ。
渋谷で最近起きた宝石泥棒の話
登場人物
いるかちゃん バーのシェイカー 阪東いるか 二十三歳会社員 栗色のボブカット
マスター 名前は島 バー「森へ抜ける道」のマスター
主人公 名前は工藤 マスターと同い年 今は探偵業 マスターと山内とで「ヤクドシトリオ」と呼ばれている 山内のヤ＋工藤のクド＋島のシでヤクドシというらしい 命名時の年齢が厄年だった
山内 やせ型で背は高い 筋肉質 議論好き 口髭と臙脂色の眼鏡 今はフリーライター
桜川東子 さくらがわはるこ 美人で奥ゆかしい 聖シルビア女学院の二年生
千木良青年 イケメン青年 隣町の映写技師 ミステリ映画とサスペンス映画好き
植田刑事 警視庁の刑事 五十ぐらい 眼鏡、背は低く、頭がでかくて、薄髪のオールバック 夜の捜査会議でマジな捜査情報をうっかり話す
工藤は元刑事で、二年前、渋谷で山内と宝石の窃盗事件を起こして逮捕され、服役していた。
当然、彼らの罪を暴いたのは、この桜川東子さんなのである。
元刑事で犯罪者と、それを暴いた桜川東子さんとマスターが仲良く集っているという不思議な空間なのだ。
（そういえば、そういう設定だった。思い出してきた。）
工藤は、今探偵業で凌いでいる。
そして今回起きた渋谷の宝石泥棒の事件に話が及んだ。
なんとなく、工藤と山内は、その話題を避けたかったが、その場の雰囲気で、夜の捜査会議が始まった。
と言っても、酒場の無駄話だが。。。
被害者（仮名）
九重鋭一 輸入雑貨の卸販売の会社を経営 P39には社員情報（省略）
九重富美子 事件の前に亡くなっている
被害者は高級住宅街に住んでいた。という会話の途中で、お金を学校図書館に寄付している人がいるという話から、図書館の存在意義のような雑談にまで脱線して行った。。。（いつものことだが）
いつのまにか、アイドルの話になり、スマホの話になり、ヤクドシトリオが、そもそも携帯電話なんてなかったという話に、いるかちゃんはものすごく驚き、千木良青年が「それは不便だったでしょう」と言うと、「社会全体がスマホを知らないんだから特に不便と感じたことはありません」と答えたマスターに、私も「そのとおーり！」と、相槌を打った。
わたしも、待ち合わせで会えなかった友人宅にあとで謝りに行ったことを思い出した。そんな時代だった（😢）
そう、私らが若い頃は、コンビニもマクドも無かった。日本上陸１号店！というのが、たくさんあった気がする。
話が脱線したので、本線に戻そう。
桜川東子さんは、九重富美子さんの事故死を殺人ではないかと疑い、当時担当だった植田刑事から情報を聞き出すのだった。
それから、会話はいろんな話題に脱線して、ここでは書き尽くすことが出来ないので省略する。
話はいつのまにか、昔の犯罪者（工藤と山内）による遠隔窃盗という話に発展していた。
遠隔というのは、この九重さんの事件が起きたときは、工藤と山内はまだ刑務所の中にいたので、直接手を下せないから遠隔で窃盗を実行したのだろうという予想である。バーの連中は、飲み友だちの二人を犯人にしたいのか？
そして、九重富美子さんは、夫の九重鋭一に殺害されたという推理まで飛び出している。
話を整理すると、婿入りだった鋭一は妻の財産を思うように使えなかったので、夫人を事故に見せかけて殺害した。実際、事故死で処理されている。
そして、事故死ではなく殺人である証拠を刑務所内で掴んだ工藤と山内は、鋭一を脅迫して狂言を演じさせ、九重家から宝石を奪うことに成功した。そしてその金は全国の学校図書館に匿名で寄付されたのだろう、と推理された。
さて、工藤と山内が犯人なら、
刑務所に居ながら
・どうやって九重鋭一の犯行の証拠を掴んだのか？
・どうやって九重鋭一と連絡を取って脅したのか？
これらの謎を桜川東子さんが解明したとき、残念ながらバー「杜へ抜ける道」は閉店を迎え、桜川東子シリーズは完結するのだ！（淋しい。もっとマスターのボケが聞きたかった！ 誰か何とかしてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ）
おわり
鯨統一郎さんのプロフィール
１９９８年、『邪馬台国はどこですか？』でデビュー。傑作・怪作・奇作・話題作を連発する、本格推理界随一のトリック・スター（WEB上の紹介文より）
〆
