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『 絶対解答可能な理不尽すぎる謎 』 松本清張賞受賞作家が描く七人の素人名探偵 書評・感想 

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著者 未須本有生 書評・感想

目次

レビュー

展開の面白さ、見どころ

未須本有生さんの他の作品に出てくる登場人物が、各編で主役となっている短編集です。
あの真面目なドラマの登場人物たちも軽いノリで謎解きに興じていて読み手のこちらも気楽に読めました。
普段は忙しいはずの登場人物たちも、なんとか都合をつけて登場します。

では、七人の名探偵をご紹介します。
・高沢のりお・・・ミステリー作家
・深川隆哉・・・映像作家
・園部芳明・・・警察官僚
・鷺宮聡・・・ワイン評論家
・小野寺司郎・・・出版社の編集者
・沢本由佳・・・エンジニア
・倉崎修一・・・デザイナー

これだけの職種の人間が集まれば、たいていの事件は解決するのです。

内容を少し(各編とも最後のネタバレなし)


小説家 高沢のりお氏の災難

アニメオタクのミステリー作家の高沢のりお氏が、アニメを一緒に見ようと、仲のいい友人の倉崎を自宅に招くが、倉崎が高沢のりお氏の豪邸を訪ねると、仕事部屋の1Fのインターホンには反応がない。

しかたなく3Fの事務所を訪ねるとマネージャーが高沢氏を呼び出そうとしてくれるが、やはり返事がない。倉崎とマネージャーは二人で邸宅内の階段から1Fへ降りてみると、血だらけになった高沢氏が仰向けに倒れていた

気を失う前に残したメッセージは、「ハンニンハ、オノデ・・・」
事件に巻き込まれたフリーデザイナーの倉崎修一氏が警察との推理勝負に挑む。
倉崎修一氏のほうが災難だ

映像作家 深川隆哉氏の誘引

警視庁勤務の園部芳明は、友人で映像クリエーターの深川隆哉から面白い賭けに誘引された。
深川は取材で1週間自宅を留守にするから、自宅のワインセラーの暗証番号を突き止めてオープンできたらワインを自由に飲んでよい

暗証番号は数字5桁、十回間違えると翌日にならないと受け付けない。ヒントは別の1室の中に隠されている。というものだ。私でも挑戦したくなるような内容だ。

さて警視庁勤務で忙しい園部はこの挑戦を受けるのだろうか。受けないと物語は終わるから受けるのだが、助っ人はありだが警察関係者はNGとのこと。かなりやさしいと思うが、どうだろう。

いろいろ電話して、結局この小説の登場人物が揃ったようだ。出来過ぎだ。謎解きコメディーな感じだが取り敢えずよしとしよう。

それぞれの得意分野の知識を駆使して謎を解こうとするが、次々と襲い掛かるフェイク!さあ、うまいワインは飲めるのか!

公務員 園部芳明氏の困惑

警視庁の警務部に勤める園部は、毎朝通る道沿いに住む七十三歳の秋山昌造とは挨拶を交わす。

ある日、秋山の姿が見えないので、家を訪ねると、玄関で秋山が倒れていた
園部は救急車を呼んで事なきを得た。

だが、入院中に飼っている熱帯魚の世話を頼まれてしまった
水槽は二つあって、大きな水槽には何十匹もの熱帯魚が飼われていて、陰の小さい水槽には四匹ほどの熱帯魚が飼われていた。

秋山さんの話では、小さい水槽の魚のほうが重要らしいが、そんな風には見えない。そこで園部は友人らにそのことについて相談した。写真を撮ってSNSで送って確認してもらう。やはり謎だ。

園部は秋山老人がいつも来てもらっていたというヘルパーさんを訪ね、水槽のことを聞くと思いも書けない自白を受け、困惑する。

園部はこの案件をどう治めるのか?

私もかつて自宅に60センチ水槽を二つ置いて、野性魚や金魚を飼っていた経験があり、とても興味深く読むことが出来ました。一戸建てなら飼いやすいのですが・・・。

評論家 鷺宮聡氏の選択

ミステリー作家の高沢のりおは、人気急上昇中の天宮千景という独身女性作家に惚れたらしい。

高沢は友人の倉崎からヒントを得て、天宮さんに接近するべく、編集担当の小野寺さんに相談した。

スイーツ好きだが中途半端なプレゼントは逆効果と聞き、さらにアルコールは弱いがある特定のシャンパン好きだという情報までは掴んだのだが・・・。

今度も私が好きなお酒の話だ。飲むのが好きなだけでワインやシャンパンの銘柄などは全く分からないが・・・。

そこで、高沢は天宮さんと関係のあるイラストレーターで酒豪の笹乃葉さんに天宮さんの嗜好について聞き出すことにしたのだが・・・。

編集者 小野寺司郎氏の失策

大御所作家の但馬廉丞の編集担当でもある小野寺君からミステリー作家の高沢のりおに困窮した様子の電話がかかってきた。

小野寺君は、バラ好きの但馬廉丞先生の好きなバラの世界へ足を踏み入れ、先生宅の庭のバラの剪定まで任されたまでは良かったが、なぜか但馬廉丞先生の機嫌を損ね、逆鱗に触れたという。

以後、相手にしてもらえず困っているから仲を取り持ってほしいという。

原稿が遅れていることもあり、高沢はこの役を引き受けた。
さっそく、但馬廉丞先生宅を訪問し、何に怒っているのか単刀直入に聞いてみた。

やはりたわいもない理由らしい。だが、但馬廉丞先生のプライドは高く自分からは謝りたくないという。

その代わりに「何で怒っているか理由は二つあるから当ててみよ、当てたら小野寺君の会社の原稿を最優先で書くよ」などと言いだした。

問題をすり替えたうえに恩着せがましくなっている。

ミステリー作家の高沢のりおは、うっかり本能的にミステリーの挑戦を受けてしまった。
高沢は、バラの庭と小野寺が持って行った鉢植えの写真をたくさん撮って退散した。

ひとりで考えても効率が悪いので、いつもの友人らに声を掛けた。
写真を見ての推理の末に、降参を告げに但馬廉丞先生宅へ向かった二人だったが・・・。

デザイナー 倉崎修一氏の疑惑

ミステリー作家の高沢のりおは、三年掛かった小説をようやく書き終えて、編集担当の小野寺に原稿を渡したのだが、一週間後、渋い表情で現れた小野寺は、このままでは出版できないと言う。
なぜなら、あるキャラクターの行動が矛盾しているという。

だが、高沢は今回だけはそういうキャラでいいじゃないかと言う。

どういうことなのか、どこが矛盾しているのか。高沢はそういう人物が実在するから問題ないと言うが、編集担当の小野寺としては、一般読者は納得しないと思っている。

高沢が実在する人物として招いたのは、友人の倉崎だった。
さて、倉崎の何が一般人から見たら矛盾しているというのだろうか!

著者プロフィール

1963年、長崎県生まれ。東京大学工学部航空科学科卒業後、大手メーカーで航空機の設計に携わる。1997年よりフリーのデザイナー。2014年、『推定脅威』で、第二十一回松本清張賞を受賞。他の作品に『リヴィジョンA』『ドローンス・クランブル』『ファースト・エンジン』がある。(本書の情報より)

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関連作品

書籍・著者情報

・形式 単行本
・出版社 株式会社 文藝春秋
・ページ数 222頁
・著者 未須本有生
・発行 2018年7月10日


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